- 車売却した時の勘定項目と仕分けについて知りたい
仕事で使っている車を売却し利益が出た場合、利益として申告しなければいけない場合もあります。
また車を購入したらそれを減価償却するケースがほとんどであるため、勘定科目や仕分け方法がよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
勘定科目や仕分けという言葉を聞くと不安に思う方もいるかもしれませんが、ポイントさえわかれば恐れることがありません。
ここでは法人個人別の車売却時の勘定科目と仕分け方法を分かりやすく解説しています。
個人事業主が車を売却した場合の勘定科目
個人事業主でも事業用では使わない車がある方もいるでしょう。
実際に車を売却した場合に、どのように勘定科目を仕訳すべきか、どれくらいの利益が出たら税金がかかるかなども知っておくといいでしょう。また所有年数によっても変わるのでチェックしてみてください。
事業用の車だけが確定申告?レジャー用で50万円超の利益が出た場合も
個人事業主は車を持っていても仕事には使わないというケースもあるでしょう。事業用の車を売却して利益が出た場合には確定申告が必要ですが、仕事で使わない車を売って利益が出た場合にも確定申告が必要になる場合もあります。
通勤や通学、買い物などで使用する車なら日常生活に必要な動産として利益が出ても確定申告は不要です。
ですがレジャー用や趣味で購入した車を売却した場合に、50万円を超える利益が出た場合には確定申告が必要になるケースもあります。
個人事業主が車を売ると総合課税の『譲渡所得』という扱い
個人事業主が仕事で使っていた車を売却して得たお金は、仕事上の収入になるわけではありません。車を売却した場合、買取業者へ車を譲渡するという形になるので、勘定科目上は総合課税の譲渡所得という扱いになります。
確定申告書の欄にも譲渡所得という欄があるため、そちらに入力する事になります。いずれにせよ所得になるため支払う所得税が増えてしまうのではと思うかもしれません。
確かに増えるケースもありますが、譲渡所得には控除もあるのでそれほど心配するくらいではないでしょう。
譲渡所得の『長期譲渡所得』と『短期譲渡所得』について
譲渡所得には車を購入してから売却するまでの所有期間に応じて以下の2つに分けられます。実際の譲渡所得についてはそれぞれ計算方法があるので、どちらになるかによって額も変わってきます。
【長期譲渡所得】車を所有して5年を超える
車を購入してから売却するまでの車の所有期間が5年を超えるというケースもあるでしょう。それほど頻繁に車を使用するわけではない業種では、あまり車にコストをかけないようにこういったケースも少なくありません。
このように車を所有して5年を超えている場合には長期譲渡所得となります。長期譲渡所得の場合には課税対象となるのは短期譲渡所得よりも少なくなり、半分になるのです。
【短期譲渡所得】車を所有して5年以内
仕事上頻繁に車を買い替えるというケースもあるのではないでしょうか。また、車は常に新車に乗っていたほうが何かと役に立つ仕事の方もいます。
そういったケースでは車を購入してから売却するまでの期間が5年以内になる方もいるでしょう。車の所有期間が5年以内だった場合の譲渡所得は、短期譲渡所得という扱いになります。
5年を超える期間、車に乗っていれば価値が大きく下がるため利益が出ることは少ないですが、短い期間だと特に利益が出る可能性があります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は単純に利益が出た分を入力すればいいのではありません。譲渡所得には特別控除が50万円あり、さらに短期譲渡所得と長期譲渡所得とでも違ってきます。
計算式はそれぞれ以下の通りです。
短期譲渡所得 | (売却価格-簿価)-特別控除50万円 |
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長期譲渡所得 | {(売却価格-簿価)-特別控除50万円}×1/2 |
譲渡所得5年以内の場合:(売却価格-簿価)-特別控除50万円
車を所有していた期間が5年以内だった場合には短期譲渡所得となり、その所得額は(売却価格-簿価)-特別控除50万円で求められます。簿価とは車を購入した際の金額になります。
例として200万円で購入した車が260万円、250万円、200万円で売却した場合の譲渡所得を計算してみます。
260万円で売却 | (260万円-200万円)-50万円=10万円 |
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250万円で売却 | (250万円-200万円)-50万円=0円 |
200万円で売却 | (200万円-200万円)-50万円=-50万円 |
このケースでは260万円で売却した時のみ10万円の譲渡所得になります。
譲渡所得5年超の場合:{(売却価格-簿価)-特別控除50万円}×1/2
車を所有していた期間が5年を超える場合には長期譲渡所得となり、{(売却価格-簿価)-特別控除50万円}×1/2で求められます。
例として200万円で購入した車が260万円、250万円、200万円で売却した場合の譲渡所得を計算してみます。
260万円で売却 | {(260万円-200万円)-50万円}×1/2=5万円 |
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250万円で売却 | {(250万円-200万円)-50万円}×1/2=0円 |
200万円で売却 | {(200万円-200万円)-50万円}×1/2=-25万円 |
このように譲渡所得になるケースは同じですが、長期譲渡所得の場合は短期譲渡所得の半分の額になります。
個人事業主が事業用の車を売却した場合の仕訳方法
個人事業主が事業用の車を売却した場合、仕訳方法は4つの方法を選択できます。その4つを以下の条件下で解説します。
帳簿価格 | 税込みで180万円 |
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使用年数 | 3年 |
減価償却費 | 90万円 |
リサイクル預託金 | 1万8,000円 |
車の売却時の金額 | 税込みで100万円 |
【直接法:消費税込み】
直接法とは減価償却価額を直接差し引いて帳簿上は減価償却価額を入力しない方法になります。消費税込みで入力する場合は以下のようになります。
借方 | 現預金100万円:合計100万円 |
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貸方 | 車両運搬具90万円 リサイクル預託金1万8,000円 事業主借8万2,000円:合計100万円 |
このように貸方には車両運搬具として入力します。そして売却金額から車両運搬具、リサイクル預託金を差し引いた8万2,000円は事業主借として仕訳します。借方・貸方の合計金額は100万円となります。
【直接法:消費税抜き】
直接法での仕訳の場合で、消費税抜きで計算する場合には以下のようになります。
借方 | 現預金100万円:合計100万円 |
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貸方 | 車両運搬具818,82円 仮受消費税9万,909円 リサイクル預託金1万8,000円 事業主借7万2,909円:合計100万円 |
税抜きの場合でも、現預金は消費税込みで入力し、売却金額の消費税分となる9万,909円は仮受消費税として貸方に入力となります。
リサイクル預託金は消費税込みの場合と同じ1万8,000円で入力します。その結果、事業主借は7万2,909円と税込み時よりも少なくなります。
【間接法:消費税込み】
間接法とは直接法と違って、減価償却価額を車両運搬具から差し引かずに入力する方法になります。同じ条件で仕訳すると以下のようになります。
借方 | 現預金100万円 減価償却価額90万円:合計190万円 |
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貸方 | 車両運搬具180万円 リサイクル預託金1万8,000円 事業主借8万2,000円:合計190万円 |
直接法と比較すると合計金額がそれぞれ減価償却価額の90万円を含めた190万円と高くなります。ただリサイクル預託金と事業主借の額については直接法と同じ金額になります。
【間接法:消費税抜き】
間接法の消費税抜きで仕訳すると以下のようになります。
借方 | 現預金100万円 減価償却価額81万8,182円:合計181万8,182円 |
---|---|
貸方 | 車両運搬具163万6,364円 仮受消費税9万,909円 リサイクル預託金1万8,000円 事業主借7万2,909円:合計181万8,182円 |
このように車両運搬具も消費税抜きとなり163万6,364円に変わります。ただ仮受消費税、リサイクル預託金、事業主借については直接法と同じ額です。
減価償却費の計算方法
仕事で使っている車は資産にあたるため、確定申告の際には耐用年数に応じて減価償却費を算出して経費に計上する事ができます。耐用年数は新車を購入した場合と中古車を購入した場合とで変わってきますので注意しましょう。
【ケース①】新車購入
仕事で使用する車を新車で購入した場合の減価償却費は以下の法定耐用年数で計算する事になります。
普通自動車 | 6年 |
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軽自動車 | 4年 |
例えば新車の普通自動車を300万円で購入した場合、1年分の減価償却費は300万円÷6年で50万円です。
仮に4年使用して売却した場合には、4年間の合計金額は200万円です。160万円の軽自動車を新車で購入した場合には、1年分の減価償却費は40万円となります。
法定耐用年数が過ぎれば減価償却費は0になり、売却せずに乗っていれば未償却残高は1円とします。
【ケース②】中古車購入
仕事用の車を中古車で購入した場合には、新車のような法定耐用年数ではなく耐用年数を元に計算します。
耐用年数の計算方法は、法定耐用年数を過ぎた場合と残っている場合とで以下のように変わります。
法定耐用年数を超えていない | 法定耐用年数-経過年数+経過年数×20% |
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法定耐用年数が越えている | 法定耐用年数×20% |
法人事業者が車を売却した場合の勘定科目
法人事業者が車を売却した場合には、個人事業主とはちょっと違います。法人の場合には車を売却して発生した利益は事業場の収入に、損失は支出になります。勘定科目は以下の通りです。
車売却で利益が出たら『固定資産売却益』という扱い
法人が事業で使用する車を売却し、売却時の帳簿価格つまり売却時の車の価値を上回る場合には収入とみなします。
勘定科目では固定資産売却益という扱いになります。帳簿価格は使用年数に応じて、売却時に再計算された車の価格になります。
例えば法定耐用年数が6年の普通車を200万円で購入し、3年で売却した場合には帳簿価格は100万円です。
もし150万円で売れた場合には、その差額の50万円が固定資産売却益として記入することとなります。
車売却で損失が出たら『固定資産売却損』という扱い
法人で事業で使用する車を売却した場合、一般的な車であれば売却額は帳簿価格よりも少なくなるでしょう。
その場合には下回った分は事業での損失となり、勘定科目では固定資産売却損という扱いになります。
例えば前項同様、法定耐用年数が6年の普通車を200万円で購入し、3年で売却したとします。この場合の帳簿価格は100万円です。
その車の売却額が80万円だった場合には、その差額の20万円が固定資産売却損として記入することとなります。
法人事業主が事業用の車を売却した場合の仕訳
法人事業主が事業用の車を売却した場合、仕訳方法は直接法と間接法があり、さらに税込みと税抜きの4つのパターンに分けられます。ここではそれぞれの仕訳を以下の条件で解説します。
帳簿価格 | 税込みで180万円 |
---|---|
使用年数 | 3年 |
減価償却費 | 90万円 |
リサイクル預託金 | 1万8,000円 |
車の売却時の金額 | 税込みで100万円 |
【直接法:消費税込み】
直接法は減価償却費を固定資産から直接差し引いて計算していく方法になります。直接法を消費税込みで計上する際の勘定科目の仕訳は以下のようになります。
借方 | 現預金100万円:合計100万円 |
---|---|
貸方 | 車両運搬具90万円 リサイクル預託金1万8,000円 固定資産売却益8万2,000円:合計100万円 |
このケースでは売却金額100万円から車両運搬具の90万円とリサイクル預託金1万8,000円を差し引いた8万2,000円が固定資産売却益となります。借方と貸方の合計は100万円です。
【直接法:消費税抜き】
直接法を消費税抜きでの仕訳をする場合には、消費税込みとは貸方の記入方法が変わってきます。計算方法は以下のようになります。
借方 | 現預金100万円:合計100万円 |
---|---|
貸方 | 車両運搬具818,82円 仮受消費税9万,909円 リサイクル預託金1万8,000円 固定資産売却益7万2,909円:合計100万円 |
消費税抜きで仕訳した場合も固定資産売却益は7万2,909円と消費税込みでの仕訳と同額になります。
ただ消費税抜きの場合には売却金額の消費税分の9万,909円が仮受消費税として記入する事になります。
【間接法:消費税込み】
間接法による仕訳は直接法とは異なり、車両運搬具から減価償却価額を引かずに入力する方法です。
間接法を消費税込みで仕訳すると以下のようになります。
借方 | 現預金100万円 減価償却価額90万円:合計190万円 |
---|---|
貸方 | 車両運搬具180万円 リサイクル預託金1万8,000円 固定資産売却益8万2,000円:合計190万円 |
直接法の税込仕訳と比べると借方に減価償却価額の項目が増え90万円、貸方には車両運搬具が90万円プラスされます。固定資産売却益は同じです。
【間接法:消費税抜き】
間接法を消費税抜きで仕訳すると内容は以下のようになります。
借方 | 現預金100万円 減価償却価額81万8,182円:合計181万8,182円 |
---|---|
貸方 | 車両運搬具163万6,364円 仮受消費税9万,909円 リサイクル預託金1万8,000円 固定資産売却益7万2,909円:合計181万8,182円 |
このように消費税抜きとなると、貸方に売却金額の消費税分となる9万,909円が仮受消費税として記入する事になります。
また減価償却価額と車両運搬具が減ることになり、固定資産売却益も7万2,909円と消費税込みよりも少なくなります。
車売却時の勘定項目と仕分けまとめ
車売却時の勘定項目と仕分けについてまとめると、以下の通りです。
- 事業で使用する車を売却した場合には確定申告の際に損益をそれぞれ仕訳する必要ある
- 個人事業主が仕事ではなく通学や子供の送り迎え、買い物などで車を使用する場合には確定申告の必要なし