- 個人事業主が車を売る時の所得税や確定申告について
車を買取業者に売ると売却金を得ることができますが、「所得税は支払わなければならないのか?」と気になるところです。
特に個人事業主の方で「車を売却するのは初めて」という場合、確定申告の手続きの時にどのような納税義務が発生するのか(あるいはしないのか)という事情が気になるでしょう。
そこで今回は個人事業主が車を売却する際の所得税や確定申告の問題について見ていきたいと思います。
そもそも「確定申告」って何?
今はまだ個人事業主ではないけれどゆくゆくそうなる予定の人もいるでしょうし、確定申告についてあまりよく分かっていないという方もいるはずですから、まずは確定申告の基礎知識について解説していきましょう。
確定申告というのは、1年間の所得に対してかかる税金である「所得税」を自分で計算して税務署に申告する手続きのことをいいます。
一般的な話でいえば、会社勤めのサラリーマンの場合には会社がその手続きをしてくれるので確定申告する必要はありません。よく聞く「源泉徴収」や「年末調整」というような手続きによって行われているからです。
ただし、サラリーマンの方のなかでも条件によっては確定申告を行わなければならないケースもあります。
「所得」とは?
1年間の所得に対してかかる税金である「所得税」を自分で計算して税務署に申告する手続きのことを確定申告というと説明しましたが、所得と聞いてもいまいちピント来ない方もいるかもしれません。
所得とは収入から必要経費を引いて残った金額のことをいいますが、その所得というのは様々な種類があって10種類に区分されています(詳しくは「国税庁『No.1300 所得の区分のあらまし』」)。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得:個人事業主による車の売却益
- 一時所得
- 雑所得
儲けによって得たお金のことなので、サラリーマンのお給料や副業の収入などもそうですし、銀行の利子や株主の配当金、土地や建物のような資産の譲渡、競馬の払戻金、公的年金などあらゆるタイプの所得があります。
あとで詳しく解説しますが、個人事業主が車を売った場合、譲渡という扱いになるので「譲渡所得」として申告することになります。
どんな人が確定申告をするのか?
確定申告といえば、フリーランスや個人事業主といったイメージがありますが、該当者はそれだけではありません。
土地やアパートを貸して収入のある人や、勤務先からの給与収入が2,000万円を超えるサラリーマン、2社以上の勤務先から給料をもらっているサラリーマンなども当てはまります。
ただし、確定申告の必要・不要には一定の条件が設けられているので、それによっても変わってきます。例えば年末調整を受けている会社員による副業の収入が20万円に満たない場合、確定申告はいりません。
個人事業主の場合にも「収入(売上)」から「必要経費」を差し引いて、さらに「各種控除」というものを引いた金額がプラスにならなければ確定申告の必要はありません(※申告不可ということではないので申告することもできます)。例えば売上がゼロの人も申告不要です。
車の使用用途によって課税・非課税が異なる
前の確定申告の説明で、個人事業主が車を売った場合、「譲渡所得」として申告することになると少しだけ触れました。
つまり車の売却には所得税がかかるという意味ですが、ケースによって所得税を支払う必要の有無は異なります。
「業務用」というのは商売に使うほか、個人事業を行う自分の職場までの通勤に使う場合もこれにあてはまります。
しかし業務やレジャーとは関係のない「生活に必要な手段」、例えば買い物用など普段の生活で使用する目的であれば非課税扱いになります。少しややこしい話ですが、個人事業主をしながら、別の会社の通勤に使う場合にはこちらにあてはまります。
個人事業主の車の売却益は「譲渡所得」
所得には様々なタイプがありますが、個人事業主が車を売った場合には「譲渡所得」として処理します。
譲渡所得とは「土地、建物、株式等、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得」のことをいいます。仕事で儲けた「事業所得」ではないので注意しましょう。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算式は売却する車両の状況によって少し違いがありますが、まずは基本式をおさえておきましょう。
譲渡所得=譲渡価格ー(取得費用+売却費用)ー50万円
「譲渡価格」というのは車買取による売却価格のことを指しています。
「取得費用」というのは車を手に入れるためにかかった購入価格です。ただし、車というのは時間の経過とともに価値がだんだん落ちていくものなので、「購入価格」から「減価償却費」を差し引いた価格が「所得費用」になります。
「売却費用」というのは、車を売る時にかかる費用です。書類手続きを業者に代行してもらうなどで発生した費用です。
「譲渡価格ー(取得費用+売却費用)」というところまでは、得た金額から出ていった金額を引いているだけの式になりますが、さらに「特別控除」というもので50万円を引くことになります。そのようにして計算された金額が「譲渡所得」の値になります。
ただし、これは基本式で後で見るように車の所有期間の長さによってここからさらに計算するケースもあるので注意しましょう。
売却額が50万以下で節税も
譲渡所得=譲渡価格ー(取得費用+売却費用)ー50万円
この式では50万円という特別控除が固定されています。つまり、売った車が50万円以下の場合、特別控除50万円を引くと譲渡所得はプラスにはならない計算です。そのため、50万円以下で車を売却した場合には所得税を納める必要はありません。
こういう事情もありますし、車の売却価格が取得費用よりも大幅に低くなっていることも多いため、車の売却の際に課税対象となって所得税が発生することはありません。
個人事業主の場合、そのマイナスの状態(譲渡損失)により節税の可能性があります。
譲渡所得というのは「総合課税」といって、他の所得と合わせて計算できます。つまり車の売却で利益が出てプラスになれば、その分で事業の赤字を補填することもできますし、その反対に、車の売却のマイナスに対して事業の黒字で補填することもできます。
その計算で所得税を算出するので、課税額が少なく済むというわけです。
短期譲渡と長期譲渡
先に挙げた譲渡所得の計算方法が基本式になりますが、車の所有期間の長さによってそこからさらに計算が必要になる場合があります。
- 短期譲渡:車を所有して5年以内で売却⇒譲渡所得の基本式
- 長期譲渡:車を所有して5年以上経ってから売却⇒譲渡所得の基本式×(1/2)
車を購入するなどして5年以上経ってから売却したものについては、
譲渡価格ー(取得費用+売却費用)ー50万円
という計算で出した金額の半分の額が譲渡所得の値になります。そのため、5年を基準とした売るタイミングによって税額は大きく変わってきます。
車を売る時の所得税や確定申告まとめ
車を売る時の所得税や確定申告の情報をまとめると、以下の通りです。
- 個人事業主が「業務用」や「レジャー用」として車を使う場合、課税の対象となって所得税を支払う必要あり
- 買い物用など普段の生活で使用する目的であれば非課税扱い