車を売却したのに買主が名義変更してくれないと、売ったはずの車の自動車税が請求されたり、交通違反や事故の責任を問われたりするおそれがあります。
国土交通省でも、「自動車の所有者が変更になった場合は、速やかに移転登録(名義変更)の手続きを行う必要がある」と案内しており、放置すれば思わぬトラブルにつながるのは明らかです。
名義変更を放置するのは非常に危険なので、買主が名義変更をしてくれない場合には、速やかに対応に乗り出してください。
この記事では、名義変更で困らないためにトラブルの原因から取るべき対応策、未然に防ぐ方法まで、わかりやすく整理しています。
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名義変更されないと何が起こる?放置リスクを具体的に解説

車を売却したあとに名義変更が行われないまま放置されると、さまざまなトラブルに発展するリスクがあります。
とくに個人売買や知人への譲渡では、手続きが買主任せになってしまうことも多く、あとから思わぬ責任を負う事態になりかねません。
名義変更しないことで起き得るトラブル
以下では、名義変更をしないことで実際に起き得る代表的なトラブルを具体的に解説します。

1. 自動車税や延滞金の請求が自分に届くリスク
車の名義変更が行われていない場合、たとえ売却済みであっても自動車税の納税通知書は前オーナーであるあなたのもとに届きます。
これは、自動車税が「毎年4月1日時点の登録名義人」に課税される仕組みになっているためです。
たとえば、3月末に車を売却したとしても、4月1日までに名義変更が完了していなければ、翌年度の納税義務は売主側に残ってしまいます。
さらに厄介なのは、買主がそのまま放置してしまい、自動車税の支払いもされずに延滞が発生した場合です。
延滞金や督促状が元の所有者に届くことで、まったく無関係な税金トラブルに巻き込まれる可能性があるのです。

こうした事態を避けるには、売却日と名義変更手続きのタイミングを慎重に調整することが重要です。
とくに3月下旬などのギリギリの時期に売却する場合は、「4月1日までに確実に名義が変わっているか」を意識しなければなりません。
2. 違反・事故でも前オーナーに責任が及ぶ可能性
名義変更が行われていない車で買主が交通違反や事故を起こした場合、その責任が前オーナーに及ぶ可能性があります。
たとえ車を手放していたとしても、車検証の「所有者欄」にあなたの名前が残っていれば、第三者からはその車の持ち主と見なされてしまうのです。
たとえば、スピード違反や駐車違反などがカメラによって記録されるケースでは、現場で取り締まりを受けるのではなく、あとから所有者宛に違反の通知が郵送されます。
このとき名義が変わっていなければ、通知はあなたのもとに届きます。
また、事故やひき逃げ、さらには犯罪に関わるような使われ方をした場合も、まず最初に連絡が来るのは名義人であるあなたです。
もちろん実際に運転していなければ法的な責任を問われることは基本的にありませんが、事情説明のために警察や行政とやり取りを強いられる精神的・時間的な負担は避けられません。
3. ローン残債やリース契約中だとさらにトラブル化しやすい
車を売却する際、その車にローン残債が残っていたり、リース契約中だった場合は、名義変更がさらに複雑になります。
こうした車の名義は通常、信販会社やリース会社が「所有者」として登録されており、売主は「使用者」となっているケースがほとんどです。
このような車は、名義人である金融機関の承諾がなければ名義変更ができません。
つまり、ローンを完済していないまま勝手に個人間で売却してしまうと、そもそも法的に名義変更ができない可能性があるのです。
結果的に、買主が車を所有して使っているのに、名義はローン会社のままで、使用者としては前オーナーが登録されているというねじれた構図になりかねません。
さらに厄介なのは、ローンを滞納していた場合やリース契約に違反していた場合です。その車が差し押さえの対象になることもあり、買主・売主の双方に金銭的・法的なトラブルが波及する可能性も出てきます。
こうしたリスクを避けるには、ローンの完済証明や所有権解除書類をきちんと取得した上で売却することが前提条件です。


名義変更してくれないときの対応策


車を売却したあと、買主が名義変更の手続きを行わないまま放置していると、前オーナーであるあなたにトラブルが降りかかることになります。
自動車税の納付通知が届いたり、違反や事故の責任を問われたりといったケースは、すべて「名義が変わっていないこと」が原因です。
名義変更してくれないときの対応策
買主が名義変更をしてくれない状況に直面した際には、できるだけ早く対応に乗り出す必要があります。
ここでは、名義変更トラブルが起こったときに取るべき現実的な4つの手段を、順を追ってわかりやすく解説します。
1. 直接連絡をとって現状を確認する
名義変更のトラブルが起きた際、まず最初にすべきなのは買主に直接連絡をとり、現状を確認することです。
たとえ手続きが滞っていたとしても、すべてのケースに悪意があるとは限りません。買主が単純に手続きを忘れていたり、必要書類を紛失してしまっていたり、事情があって時間が取れないことも考えられます。
特に個人売買では、売買後のやり取りが曖昧なまま終わってしまうことも多く、「あとで手続きしておく」といった口約束だけで放置されがちです。



だからこそ、まずは連絡を入れて、名義変更が完了していないことを丁寧に伝え、いつまでに対応してもらえるのか確認することが大切です。
また、会話の中で相手に手続きの意思がなさそうな場合や、対応を渋るような様子が見られた場合には、「このままだとトラブルになる」 「税金や責任がこちらに残ってしまう」ことを具体的に説明しましょう。
冷静かつ客観的に伝えることで、相手が状況の深刻さに気づく可能性があります。
万が一、話し合いの中で「すぐに名義変更ができない」と言われた場合には、車を引き取って返金することも検討材料になります。とにかく放置は厳禁です。
2. 買主に内容証明を送り、手続きを促す
直接の連絡でも状況が改善されない場合は、内容証明郵便を使って正式に手続きを促す方法があります。
内容証明とは、「誰が、誰に対して、どんな内容の文書を、いつ送ったのか」を郵便局が公的に証明してくれる制度です。
相手に対して強い意思表示ができるため、任意の連絡で動かなかった相手にも一定のプレッシャーを与えることができます。
たとえば、「〇月〇日までに名義変更手続きを完了してください。これ以上対応がない場合は法的措置も検討します」といった文面で、期限と要望を明記した書面を送付します。
法的効力があるわけではないものの、証拠として残るため、万が一の裁判時にも役立ちます。
テンプレートも多く出回っているため、初めての人でもある程度は対応可能です。ただし、文面の表現や構成に不安がある場合は、行政書士や弁護士に一度相談するのも安心です。



ここまで対応しても相手が動かない場合は、行政手続きや法的手段を視野に入れて進める段階に入ります。次のステップで紹介する対策も合わせて確認してください。
3. 納税証明書の発行停止など行政手続きを行う
名義変更をめぐるトラブルで、連絡や内容証明を送っても状況が改善しない場合には、行政手続きを通じて実質的に車を使用できないようにする方法もあります。
その一つが、「自動車税納税証明書の発行停止手続き」です。
これは、各都道府県の税事務所で「第三者宛ての納税証明書発行を止める」申請をすることで、買主側が車検を受けられない状態にする手続きです。
車検を通すには納税証明書の提示が必要となるため、この証明書が発行されなければ買主は公道を走れなくなります。
この手続きには、車の登録番号や売買契約の証明、トラブル状況の説明書類などが必要になることがあります。事前に各自治体の担当窓口へ連絡し、必要書類や手順を確認しておくとスムーズです。
あくまで強制力がある処分ではありませんが、「このままだと車が使えなくなる」という事実を相手に伝える手段として非常に有効です。これにより、買主がようやく重い腰を上げるケースもあります。
なお、こうした対応はできるだけ売却時の契約内容に明記しておくことが望ましいです。たとえば、「名義変更完了後に納税証明書を引き渡す」といった条件を事前に取り決めておくことで、そもそものトラブル自体を防ぐことも可能です。
4. 法的に進めるなら弁護士への相談も視野に
名義変更をめぐるトラブルが長期化し、連絡も取れず、行政手続きでも状況が改善されない場合は、法的手段を視野に入れて対応する段階に入ります。
具体的には、弁護士に相談し、買主に対して法的措置を講じる準備を進めることが現実的な選択肢となります。
弁護士に依頼することで、まずは内容証明の文面作成から、場合によっては民事訴訟の提起や仮処分申請など、法的に効力のある行動が可能になります。
特に、車両の引き渡し条件や名義変更についての書面(念書・契約書など)がある場合には、それをもとに交渉や訴訟を有利に進めることができます。
もちろん弁護士費用はかかりますが、それでも放置していると、税金や違反の責任を押しつけられたり、最悪の場合、売却した車が事件や事故に使われて関与を疑われるといった重大なトラブルに巻き込まれるリスクがあることを考えれば、十分に検討すべき選択肢です。
相談だけであれば、初回無料としている法律事務所も多くあります。早い段階で専門家の意見を仰ぐことで、精神的な負担が軽くなると同時に、取るべき行動が明確になるのも大きなメリットです。
ここまでの手段を講じても名義変更が完了しない場合には、法的対応で区切りをつける覚悟が必要です。
名義変更されない場合、警察に盗難届は出せるのか?
買主が名義変更をしてくれず、連絡もつかないまま車が行方不明になっているような状況では、「盗難として警察に届け出できないか?」と考える人もいるかもしれません。



結論から言うと、名義変更がされていないからといって、警察が「盗難事件」として受理してくれることは基本的にありません。
その理由は明確です。車の売却にあたって、買主から代金を受け取っている以上、これは売買契約が成立しているとみなされます。たとえ名義が変更されていなくても、「相手に財産を引き渡した」という事実があるため、民事上のトラブルと判断され、警察の介入対象にはならないのです。
実際に警察へ相談しても、「民事不介入」として断られるケースがほとんどです。そのため、盗難届を出してどうにかなるという期待は禁物です。代金の未払いがある場合や契約に違反する行為があったとしても、それは裁判所を通じて解決すべき問題になります。
こうした事態を防ぐためにも、売却前にしっかりと契約書や念書を交わし、名義変更の期限や手続きを明確に定めておくことが重要です。
名義変更トラブルは「あとから取り戻す」よりも、「前もって防ぐ」ことが何より大切だといえるでしょう。
名義変更トラブルを防ぐ!売却前にやっておくべき3つのこと


ここまで紹介してきたように、名義変更をめぐるトラブルは売却後に発覚することが多く、対応が遅れるほどリスクが大きくなります。
ここでは、名義変更を確実に完了させるために、売却前にやっておくべき重要なポイントを3つに整理してご紹介します。
1. 売買契約の前に念書(同意書)を作成しておく
名義変更トラブルを防ぐための第一歩は、車を売却する前に書面での取り決めを残しておくことです。
とくに個人売買では、口頭だけの約束に頼ってしまい、後から「言った・言わない」の水掛け論になるケースが少なくありません。



そこで有効なのが、「念書」や「売買契約書」の作成です。
これには、以下のような内容を明記しておくと安心です。
- 名義変更を買主の責任で確実に行うこと
- 名義変更の完了期限(例:売却日から〇日以内)
- 期限を過ぎても手続きが完了しない場合の対応(返却・違約金など)
たとえば、「〇月〇日までに名義変更が完了していない場合は、車両の返却に応じること」といった文言を入れておけば、相手も手続きを怠れなくなります。
さらに、この念書をお互いに署名・捺印したうえで2部作成し、双方で保管しておけば、後にトラブルになった際の証拠としても活用できます。
2. 個人売買はトラブルが多くリスクが高いことを理解する
車の個人売買は、一見すると「仲介業者を挟まないぶん高く売れる」と感じるかもしれません。しかし実際には、名義変更の未実施や代金トラブル、瑕疵(不具合)に関する責任問題など、想像以上にリスクが多い取引形態です。
とくに問題になりやすいのが、「名義変更を買主に任せきりにしてしまい、後から税金の請求が来た」、「事故の責任を問われた」、「ローンの残った車を売ってしまって揉めた」といった事例です。
これはすべて、個人売買で手続きや責任の所在が曖昧になっていることが原因です。
また、フリマアプリやネットオークションなどを利用した取引では、相手の素性が不明確なことも少なくありません。信頼関係が築けていない状態で数十万円〜数百万円のやり取りをするのは、法的にも心理的にもリスクが非常に高いと言えます。
個人売買を否定するわけではありませんが、慎重な対応が求められます。事前に契約書や念書を準備できるか、名義変更の完了を確実に確認できるかなど、「信頼できる取引環境」を自分で整えられるかどうかが大きな分かれ目です。
名義変更トラブルを避けたいのであれば、手間や不安の少ない方法を検討することが、安全で確実な選択につながります。
3. 確実に名義変更される車買取業者の利用を検討する
名義変更に関するトラブルを避けたいなら、個人売買ではなく、信頼できる車買取業者を利用するのが最も安心な方法です。
大手の買取業者や中古車販売店では、売却と同時に名義変更を代行してくれるのが一般的で、手続きの流れも明確に整備されています。
とくに車買取業者では、買取契約時に必要書類の案内や名義変更の完了報告があるなど、手続きに関する不安や不明点を解消しながら売却を進められる環境が整っています。
複数の業者に一括で査定依頼ができる「車一括査定サービス」を活用すれば、名義変更の確実性だけでなく、買取価格でも納得のいく取引をしやすくなります。
編集部でも実際に車一括査定を利用した際、ディーラー下取りと比べて数十万円の価格差がついた例もありました。
価格だけでなく、手続き面の安全性を重視する方にとっても、車買取業者の利用は非常に合理的な選択肢です。
名義変更トラブルに関するよくある質問


名義変更トラブルのよくある質問
車を売ったのに名義変更してくれない場合、強制抹消することはできますか?
結論から言うと、売却後に名義変更してくれないからといって、元の所有者が勝手に「強制抹消」することはできません。
なぜなら、抹消登録には基本的に車の現物やナンバープレートの返納が必要となり、車が手元にない状態では手続きが通らないからです。


車を売却した後、名義変更はいつまでの期間に完了すべきですか?
車を売却したあとの名義変更は、できるだけ早く済ませることが大切です。
道路運送車両法では、車の所有者が変わった場合、15日以内に名義変更(移転登録)を届け出る義務があるとされています。
これを過ぎてしまうと、行政指導や罰則の対象になる可能性もゼロではありません。
名義変更ができない車には、どんな理由があるのでしょうか?
名義変更ができない車には、いくつかの代表的な理由があります。以下が主なケースです。
- ローンが完済されていない(所有権が信販会社)
- 必要書類がそろっていない
- 車検が切れている/抹消済みの車両である
ローンが残っていると、所有権は信販会社にあるため、勝手に名義変更はできません。まずはローンを完済して、所有権を解除してもらう必要があります。
必要書類については、車検証、印鑑証明、譲渡証明書、委任状などの書類が不足していると、名義変更手続きは進められません。
とくに「所有者の委任状」がないと、第三者が手続きすることはできません。
車検が切れている場合は、名義変更よりも先に再車検や仮ナンバーの取得が必要になることもあります。
また、すでに抹消登録されている車は、新たに登録し直さなければ名義を変えることができません。
このように、名義変更ができない原因は「権利関係」か「書類不備」によることが大半です。
まとめ|名義変更トラブルを避けて安心して車を手放すために
車を売却したあとに名義変更がされていないと、自動車税や違反・事故の責任が前オーナーに及ぶといった深刻なトラブルにつながります。
特に個人売買や知人への譲渡では、手続きを買主任せにしてしまい、放置されるケースも少なくありません。名義変更の重要性を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐことが、安心して車を手放すための第一歩です。
ここまでの内容を整理すると、とくに次のようなポイントが重要になります。
- 名義変更がされないと自動車税の請求や延滞金が前オーナーに届く
- ローン・リース中の車は勝手に名義変更できない
- 名義変更を放置した買主には、内容証明や納税証明書の発行停止など段階的に対応する
- 警察に盗難届を出すことは原則できず、あくまで民事トラブルとして対処が必要
- 売却前に念書を交わすなど、事前の準備で多くのトラブルは防げる
名義変更をスムーズに進めるためには、以下のような流れで対策するのが有効です。
名義変更の期限や責任を明確にする念書や契約書を交わすことで、口約束によるトラブルを回避できます。
リスクを最小限に抑えるには、個人売買よりも、名義変更を代行してくれる車買取業者の利用がおすすめです。
「引き渡したから終わり」ではなく、名義が変更されたことを確認するまでが売却の責任範囲です。
名義変更のトラブルは、後から対応しようとしても時間も労力もかかります。
だからこそ、売却時からの備えと確認が何よりも重要です。



手続きに不安がある場合は、名義変更を確実に行ってくれる買取業者を活用し、トラブルのないスムーズな売却を進めていきましょう。











