- 車線変更のルールについて
車線変更をするとき、道路にひかれた車両通行帯(白い線、黄色い線)を確認する必要があります。
車線変更のできない場所で進路変更をしてしまうと事故につながる危険がありますし、そうならずともドライバー同士のトラブルにもなりかねません。場合によっては交通違反として取締りを受けることもあります。
「こういう場合ではこれはいけないってのは分かるけど、道路がこうなっていた場合にはどうすればいいの?」と判断に迷ってしまうルールも多いです。
そこでこの記事では車線変更のルールについてわかりやすく解説したいと思います。
白い線・オレンジ線には「中央線(センターライン)」と「車線境界線」がある
道路標示のラインの意味について詳しく見ていく前に、まずは「中央線(センターライン)」と「車線境界線」の違いから説明します。
- 中央線(センターライン):対向車線との境界上
- 車線境界線:同方向の複数車線の境界上
白い線、オレンジ色(黄色)の線といっても、反対車線とのあいだにあるものは中央線(センターライン)といい、自分と同じ走行車線に並んだ線のことを車線境界線といいます。
この区別をはっきりさせずに線の役割について学ぶと誤解や混乱してしまうこともあるので案外に大事な確認です。
ちなみに、道路の左側にある線のことを「路側帯(ろそくたい)」といいます。これは歩行者の安全のために設置されたラインです。
ラインの意味「中央線(センターライン)」の場合
センターラインは進行方向を区分するためのものですが、このラインには主に次の種類があります。
そのほか、この3つの組み合わせによる標示もあります。
今から一つずつ見ていきましょう。
1.白の実線のセンターライン
反対車線との線引きが「白い実線」であるとき、線を超えることは禁止されています。
白色の連続した線なのであまり目立たず、なんとなく警告や禁止の感じがありません。しかし反対車線に入った追い越しはもちろんのこと、はみ出すこともいけません。
このラインが引かれているのは片側の道幅が6メートル以上の広さをもつ道路が一般的なので、「白い実線をはみ出さなければ追い越してもいいの?」と疑問に思うかもしれません。
それは禁止されていません。追い越す際にはみ出さずに行うことができれば問題ありません。
2.白の破線(点線)のセンターライン
対向車線とのあいだに白い破線(点線)がひいてあるとき、線の右側にはみ出ることは可能です。
片道一車線ずつの幅狭い道路でこのラインをよく見かけますが、白の破線は片側の道幅が6メートル未満の道路にあるのが一般的です。とくに、あまり交通量の多くない狭い道路に引かれています。
ラインを超えて前方の車を追い越すことはできますが、対向車が来てないかを確認し、方向指示器(ウィンカー)を出すようにしましょう。
3.オレンジ(黄色)の実線のセンターライン
道路中央にあるオレンジ色の実線は、ラインよりも右への「追い越しのためのはみ出し」が禁止されています。
オレンジ色のセンターラインが引かれているのは片側の道幅が6メートル未満の道路です。白い実線と同じく、はみ出さなければ追い越すことは可能ですが、こちらの道路は狭い道が多いので、現実的にはオレンジ線を越えずに追い越しするのは難しいです。
例外的に前方に停車する車両などがある場合、オレンジ線を超えての走行はできます。そう対処しなければ渋滞が起きかねない狭い道路だからです。
つまり、追い越す目的でセンターラインを超えるのはいけないけれども、やむを得ない状況の場合にははみ出してもよいといったところです。
先に見た「白い実線」は障害物などがあってもセンターラインより内側で追い越しができるような広い路ですから、白い実線のセンターラインは例外なくはみ出すことが禁止されていると言えるでしょう。もちろん、工事などがあって、はみ出さなければ進めないといった状況ではその限りではありません。
どちらも同じような役割の線ですが、道路事情によって細かく使い分けがされています。
複数の線がセンターラインに引かれている場合
センターラインの種類として「白の実線」「白の破線」「オレンジ(黄色)の実線」を見てきましたが、これらが組み合わさって並んでいるセンターラインも存在します。
いろんなタイプの変則的ともいえるセンターラインがあるので、いくつか例を挙げて紹介します。
センターラインが「オレンジ色の実線と白の破線」
センターラインにオレンジ色の実線と白の破線(点線)の二つが引かれていることがあります。
今自分が走っている方にどちらがあるかでルールが変わってくるので、自分に近い側にあるラインのルールで走行します。
この場合、「オレンジ線」のルールというのは「ラインを越えての追い越しのためのはみ出しは禁止」なので、それを守っていれば問題ありません。
一方、反対車線を走っている車は「白の破線」のルールに従いますから、追い越しなどのためにセンターラインをはみ出すことが可能です。
坂道は大型トラックやバスなど車両によってスピードの出方にばらつきがあるためだと思いますが、上りの道の方に追い越し可能な白の破線が、下りの方にオレンジ線が引かれているケースが多いです。
センターラインが「白色の実線2本」
センターラインの白い実線が2本並んでいる道路をどこかで見た覚えがあるという方もいるでしょう。白線二重線が設けられている道路は珍しいものではありません。
繰り返しになりますが「白い実線」のセンターラインでは線をはみ出すことが禁止されています。
対向車と事故の発生しやすい道路や交通量が多い道路などで、目立つように白線の二重線が使われています。
センターラインが「オレンジ色の実線2本と白色の実線」
この場合も、自分のそばにあるラインの種類でルールを確認すればいいです。
例外的に前方に停車する車両などがある場合、オレンジ線を超えての走行はできます。
ではどうして3本も線を引いているのかといえば、まず白色の実線は道路の中央を示すためのラインになっており、さらには前の白い実線2本と同じく注意喚起を目的としています。
センターラインが「オレンジ色の実線2本と白色の破線」
白い破線は「追い越しやはみ出しが可能」というルールで、オレンジ線は「追い越しのためのはみ出し禁止」でしたので、一見、矛盾しているように思えます。
しかしこれも先の例にならって自分のそばにあるラインの種類でルールを確認します。
では白い破線は何のためにあるのかということになりますが、例えばしばらく走っていた道路が白い破線だったけれど、その途中から追い越しやはみ出しによって事故が起きやすい区域に入ったため、オレンジ線が入っているというようなケースです。
【ちなみに】ゼブラゾーン(導流帯)
これは車が安全にスムーズに走れるように誘導することを目的として設置されています。交差点の手前などで「どこを通ってどう走ればいいのか分かりにくい」というような経験をすることがありますが、そのように車の流れが把握しづらく事故や渋滞が発生しやすい道路にゼブラゾーンが置かれています。
ゼブラゾーンが道路にある場合、それに沿うようにして走るのがふつうですが、その場所に入ってしまったら処罰されるのか?と気になる方もいるでしょう。
ただし、ゼブラゾーン設置の目的からいって、そこに車両が入ったり停止したりすることを想定せず、車が入らないエリアという前提で作られています。万が一、そのなかに入って事故を起こしてしまうと過失割合に影響を与える可能性もあるので注意が必要です。
【ちなみに】ドットライン
破線は実線を切ったようなタイプのことですが、ドットラインはこの破線を斜めにして平行四辺形にしたものです。走っている道の両側に設置してあるのをどこかで見かけたという方もいるでしょう。
道路の左右にドットラインがあることで道の幅がふつうの道路よりも狭く見えるようになっており、それによってスピードダウンをさせようとしています。
ラインの意味「車線境界線」の場合
車線境界線は同じ方向のレーンを区分するためのラインです。センターラインは主に「反対車線へのはみ出し・追い越し」に関わるものでしたが、こちらは「車線変更」に大きく関わるルールだといえるでしょう。
種類についてはセンターラインと同じもので標示しています。
そのほか、3つの組み合わせによる標示があるのもセンターラインと同様です。
今から一つずつ見ていきましょう。
1.白の実線の車線境界線
車線境界線としての白の実線はラインをまたいだ「車線変更・追い越しが可能」ですが、厳密にははみ出しを禁止する法的な拘束力はないといったニュアンスです。
交差点付近などでは、白の実線が引かれていても別の標識や法規によって、車線変更・追い越しが禁止されている区間もあるため、注意が必要です。
センターラインの白の実線ははみ出し禁止なので、まったく異なる意味で使用されています。
2.白の破線(点線)の車線境界線
車線境界線としての白の破線も白の実線と同様、ラインをまたいだ「車線変更・追い越しが可能」です。
白の実線も白の破線も、同方向でのレーンに使われているときには同じ働きをしていることになりますが、先に触れたように交差点が間近な位置、カーブなどが多くある場所では白の実線が使用されています。
実線を引くことで、注意喚起の意味合いが込められているそうです。こういう区間では他の標識や、標識がなくても法規として追い越し禁止となっていることがあるため、ルールには気をつけましょう。
3.オレンジ(黄色)の実線の車線境界線
違反としてよく見られるのが、例えば右折レーンの隣の車線からオレンジ線を超えて右折レーンへ入るという走行です。わざとというよりも、曲がらなければならないことにはっと気づいて、慌てて右折レーンに侵入するような状況が多いかもしれません。
その反対に間違って右折レーンや左折レーンに流れてしまい、途中で気づいてオレンジ線を越えて直進方向の車線へと戻るケースもあります。
いずれにせよ、車線変更禁止のオレンジ線が引かれている区間というのは事故が発生しやすい道路なので、ルールは必ず守るようにしましょう。
複数の線が二重でひかれた車線境界線
高速道路などで同方向のレーンのあいだに2本の線がひかれている場合があります。
このときには複数のセンターラインについて解説したのと同様、自分の側にあるラインのルールで走行します。手前側に白い線があれば車線変更は可能ですし、オレンジ線ならこちら側から車線変更はできません。
こういう場合は「車線変更禁止」「車線変更OK」
ここまで道路にひかれたラインの意味を説明してきましたが、具体的な状況によっては車線変更できるのか?できないのか?と不明なケースもあるかもしれません。
そこで悩みやすいケースをとりあげて紹介したいと思います。
センターラインのオレンジ線で右折するのは違反になるの?
道路を走っているとき、反対車線側にある店に入りたいときがあります。
しかし、センターラインを見ればオレンジ線。
まずこの走行は「横断」という行為にあたります。そしてセンターラインのオレンジ線は「はみ出し禁止」を意味し、走行中、反対車線側へはみ出して追い越すことを禁止しているものです。
なので、「横断」についてはこのルールが適用されません。
ただし、店が便宜的に右折進入禁止の標示を設置している場合もありますので、そのときにはそのルールを守りましょう。
高速道路での車線変更禁止は?高速道路の車線のルール
センターラインと車線境界線の白線やオレンジ線について説明してきましたが、これは高速道路でも同じです。高速道路の場合、センターラインを意識することはあまりないですし、車線境界線よりも車線そのもののルールの方が気になるはずです。
高速道路の車線には走行車線と追い越し車線があります。
片側2車線道路の場合、左側の車線を走行車線と呼びます。
片側3車線の場合では左側と真ん中の車線が走行車線となり、左側を第1走行車線、真ん中を第2走行車線と言います。追い越し車線は一番右側の車線のことをさします。
実際に走っていると案外、一番右側の車線をずっと走り続けている車をちらほら見かけますが、これは「通行帯違反」という違反にあたります。
トンネルは車線変更禁止?
トンネル内でも一般道などのように車両通行帯(白線、オレンジ線)が設けられる場合、その標示に従います。
例えば白の破線(点線)があれば、追い越し、車線変更は可能です。オレンジの実線なら車線変更禁止になります。
片側一車線の道路では追い越しは禁止になります。
追い越し禁止の車線でバスが前方にいる場合
片側一車線の道路にバスの路線がある場合、前方のバスが停留所で停まると道がふさがれ、後方の車両はバスが発車しだすまで待たないといけない状況になります。
このときにもセンターラインの標示通りに走行しましょう。
つまり、オレンジ線の場合、原則的にはラインよりも右側へとはみ出すことは禁止されていますが、前方に停車する車両、障害物などがある場合にはオレンジ線を超えて走行することは可能です。
ただ、狭い通りなので対向車が来ていないか十分に注意する必要がありますし、バスがウインカーを出して発車しようとしていないかを確認してから追い抜くようにしましょう。
交差点での車線変更は禁止?
交差点では直進するレーン、右折・左折するレーンがあって複雑なので、その付近では車線変更が禁止されているの?と気になる方もいるでしょう。
原則的に交差点での車線変更自体は違法ではないですが、ラインの標示には従わなければいけません。右折レーンなどでオレンジ線がある場所では車線変更は禁止されています。
また、車線変更ではなく、交差点内やその手前30メートルでの追い越しについては原則禁止となっています。
車線変更禁止の交通標識はある?
車線変更についてはこれまで見てきたような車両通行帯(白線、オレンジ線)で表されています。
車線変更ではなく「追い越し」に関する交通標識としては、「追い越し禁止」「追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止」などが設置されています。
「追い越し禁止」の標識がある場合、反対車線にはみ出さずに追い越すことができそうでも、追い越しをすることはできません。
「追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識については、右側部分(センターライン)をはみ出さなければ追い越しすることは可能だという意味です。
車線変更禁止の違反(点数、罰金)
車線変更禁止エリアでの違反については以下のような罰則が科されます。
- 反則金:6,000円
- 点数:1点
- 罰金:5万円
反則金というのは行政処分のことで、交通ルールを守らなかった場合の処分です。点数制度も行政処分にあたります。
罰金は刑事処分のことなので端的にいって法を犯した場合の処分です。裁判所の処分になるため、重い交通違反をしたときに科されます。
一般的な流れで言えば、行政処分である「1点の減点」と「6000円の反則金」を支払うことで罰則は終わりになります。刑事処分の手続きは免除され、前科もつきません。
しかし反則金を納めなかった場合、刑事処分として罰金刑となります。道路交通法では「三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処す」と定められています。
まとめ
今回は車線変更のルールについて解説しました。
まず道路標示のラインには2種類あります。対向車線との境界上にある「中央線(センターライン)」、同方向の複数車線の境界上にある「車線境界線」です。
この区別をはっきりさせずに線の役割について学ぶと誤解や混乱してしまうこともあるので注意しましょう。中央線と車線境界線のどちらにも、白の実線、白の破線、オレンジ線がありますが、それぞれ意味は異なります。
白の実線のセンターラインは線を超えることが禁止されています。このラインが引かれている道路は車線の幅が6メートル以上の広さをもつのが一般的であり、追い越す際にはみ出さずに行うことができれば問題ありません。
白の破線(点線)のセンターラインは線の右側にはみ出ることは可能です。オレンジ(黄色)の実線のセンターラインは右へのはみ出しは禁止されていますが、前方に停車する車両などがある場合、オレンジ線を超えての走行はできます。
白の実線・白の破線(点線)の車線境界線はラインをまたいだ車線変更・追い越しが可能です。オレンジ(黄色)の実線の車線境界線は車線変更が禁止されています。
また本文ではセンターラインのオレンジ線をまたいで向こう側の店に入る場合には違反になるのか、高速道路での車線変更はどういうルールかなど具体的なケースを挙げて解説してもいます。
車線変更禁止エリアでの違反については反則金6,000円、点数1点、罰金5万円となっています。罰則の内容を見ると、それほど重たい罪には問われないと感じるかもしれませんが、車線変更時は事故やトラブルを招きやすいので十分に注意して運転しなければなりません。