- 免停について全般的に知りたい
交通違反をして免停処分が決まった時、その後どういう流れで処分を受けることになるのか心配している方もいるでしょう。
「免停通知はいつ届くの?」「いつから車に乗れなくなるの?」「届いたあとにどういう手続きを行うことになるの?」「免停講習の内容とは?」などなど気になることがたくさんあります。
そこで今回は免停の基礎知識をはじめ、免停通知や通知書の種類、免停講習や短縮日数など免停に関わる情報を全般的に解説したいと思います。
免停(免許停止)とは?
免停(免許停止)とは「一定期間、運転を禁じる行政処分」のことです。
交通違反をした場合の処分には「行政処分」と「刑事処分」という2つの種類がありますが、まずはこの2つの違いについて見ていきましょう。
「行政処分」と「刑事処分」
スピード違反や信号無視などをすると点数が加算されてしまいますが、この点数制度は行政処分の方です。公安委員会によって行われます。
点数、反則金、免停、免取などが「行政処分」です。
一方、「刑事処分」は刑事事件を起こした者に科される罰則のことです。
裁判所に出頭し、裁判を受けて、有罪となった場合、窃盗など他の罪と同じく罰金刑や懲役刑を受けることになります。
こうした刑事上の責任が課せられるのは、重大な違反、悪質な違反の場合です。
「行政処分」と「刑事処分」は独立して別々に行われます。なので、重大な違反を犯し、懲役刑を受けたから、その分、免取にはならない、などということはありません。
免停は累積6点以上
過去3年間に免停になったことがない場合、過去3年間で累積違反点数が6点以上になると免停となります。免停の日数については、点数によって異なります。
あとで詳しく説明しますが、前歴(※一般的意味とは別。免停や免取などの違反歴のこと)の回数によっても、どれだけの点数で免停になるかは違います。
例えば過去3年間に前歴が2回あれば累積違反点数が2点以上でも免停になってしまいます。
「一発免停」でなく「累計6点で免停になった」場合も刑事処分?
とんでもなく重大な交通違反をして一発免停になるケースと、比較的軽微な違反が何度か重なって6点以上となって免停になってしまったケースがあります。
前者は酒気帯び運転や30キロ以上のスピード違反などがそれにあたります。後者は、シートベルト未装着(1点)、信号無視(2点)などの積み重ねです。
後者の場合、刑事処分になるかどうか気になるところですが、通常の軽微な違反で免停になった時には刑事処分にはなりません。
先に「前歴が2回あれば累積違反点数が2点以上でも免停になってしまう」と言いましたが、このような場合でも同様です。
免取との違い
免停(免許停止)と免取(免許取消)はよく似た言葉ですが、免停は一時的に運転資格を失ってしまうものなので、再び免許が使えるようになります。
免取(免許取消)は資格をはく奪されるということなので、再度、免許を取得しなければ運転することができません。
先程、「過去3年間に免停になったことがない場合、過去3年間で累積違反点数が6点以上になると免停」といいましたが、この場合では累積違反点数が15点以上で免許取消しとなります。
違反点数がいくらで免停になる?
交通違反をすると、違反点数が加算されて「過去3年以内におこした違反」の点数が合算されます。
先に「過去3年間に免停になったことがない場合」には過去3年間で累積違反点数が6点以上になると免停だと説明しました。
これはつまり、「過去3年間の前歴の回数」によって免停になる点数が違うということです。
前歴は免許停止期間の終了日から1年以上無事故・無違反で過ごすことができた場合、リセットされます。
前歴の回数 | 「免停」になる違反点数 | 「免許取り消し」になる違反点数 |
---|---|---|
なし | 6点〜14点 | 15点以上 |
1回 | 4点〜9点 | 10点以上 |
2回 | 2点〜4点 | 5点以上 |
3回 | 2点〜3点 | 4点以上 |
4回以上 | 2点〜3点 | 4点以上 |
前歴が多いほど、少しの違反点数でも即免停になる仕組みです。同じく、免許取り消しについても、かなり厳しい基準が設けられています。
前歴の回数が3回と4回以上はどちらも「 2点〜3点」という条件で免停になります。どうして同じ?と疑問を抱いた方もいらっしゃるでしょうが、これは免停期間で差があります。
免許停止はどれくらいの期間?
免許が停止になる期間は最短で30日、最長で180日という6種類の区分になります。
前歴の回数 | 免許停止の期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
30日 | 60日 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | |
なし | 6点~8点 | 9点~11点 | 12点~14点 | ‐ | ‐ | ‐ |
1回 | ‐ | 4点~5点 | 6点~7点 | 8点~9点 | ‐ | ‐ |
2回 | ‐ | ‐ | 2点 | 3点 | 4点 | ‐ |
3回 | ‐ | ‐ | ‐ | 2点 | 3点 | ‐ |
4回以上 | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ | 2点 | 3点 |
前歴が多いほど、長期間の停止となります。
さきほど、前歴の回数が3回と4回以上はどちらも「 2点〜3点」という条件で免停になると話しましたが、前歴3回の場合には2点で120日間ですが、4回以上の場合には同じ2点で150日間と約1ヶ月分停止が伸びます。
免停はいつから始まる?
交通違反を取り締まられて免停処分を受けることになっても、その時点ではまだ免許が停止されるわけではありません。
実際に運転できなくなるのは「免停通知書」が届き、出頭して免停の手続きを行った時点です。
そのため取り締まられた時や通知書が届いた時はまだ運転することができます。
免停通知書が届くのは何日後?
免停通知書が郵送されるのは警察の取り締まりから~1ヵ月程度といわれています。
早くて数週間、違反の内容によっては2か月以上かかる場合もあるそうです。
免停通知が来ない場合はどうする?
免停通知書が届くまでには多少の時間がかかりますが、半年など長い期間届かないと心配になります。
確認する方法として以下の2つがあります。
- 警察署に問い合わせる
- 自動車安全運転センターで「累積点数等証明書」を発行
警察署の「交通反則通告センター」という部署に電話してみて確認することができます。自動車安全運転センターで上記の書類を発行し、免停になっているか調べることもできます。
こちらはセンターの窓口で手続きを行うか、申し込み用紙(交番や免許センターなどでもらうことができる)をゆうちょ銀行や郵便局に持っていくことで取得できます。
「免停通知書」と「累積点数通知書」との違い
ついでの話ですが、免停通知書と近いものに「累積点数通知書」というものがあります。
累積点数通知書とは、免停になりかけのドライバーに通知して安全運転を促すための書類です。
前歴がない者の場合は6点で免停になりますので、4点または5点になった時にそれが届けられます。
免停通知から免停開始までの流れ【基本編】
今から免停の流れを見ていきますが、ここでは基本的な流れを説明したいと思います。免停通知には2種類あって、それぞれ流れが違っているので詳しくは後で解説します。
免停の手続きを簡単にまとめると以下のようになります。
1つずつ見てみましょう。
1.免停通知書が届く
免停通知書が届くのは違反をしてから1ヶ月以内がほとんどですが、地域や違反した内容によってはそれ以上にかかることもあります。
書類には次のような内容が書かれているので、それに従って手続きを進めていく流れです。
- 交通違反の履歴と累積点数
- 免許停止となる日数
- 出頭日と出頭場所
記載されている出頭日に出頭場所へと足を運ぶことになります。
2.指定日に運転免許センターへ
場所は最寄りの運転免許センターが指定されます。
出頭日の変更は可能です。出頭場所に前もって連絡を入れ、理由を説明すれば日取りを変えてもらうことができます。
無断で出頭日に行かないのは面倒なことになるので注意が必要です。罰金や罰則、逮捕ということもあります。
指定日に出頭できない場合は必ず連絡してください。
3.必要書類を記入
運転免許センターでは案内に従って書類に必要事項を記入していきます。
この手続き後、免許の効力が停止になります。運転免許センターへは公共の交通機関を利用しなくてはなりません。
帰りに車を運転すると、無免許運転となります。無免許運転の違反点数は25点とかなり重いので、くれぐれも気をつけましょう。
4.書類提出が完了で免停の開始
書類の提出が済むと、免停が開始されます。
当然ながらそのような理由で免停期間が免除されることはありません。
車検では自宅まで車を引き取りに来てくれる業者もありますので事前に調べておくといいでしょう。
5.免停期間終了後は警察署に免許証を返還
免停の期間があけると、警察署で手続きし、免許証の返還をしてもらいます。
場所は居住地を管轄する警察署の交通課です。指定日というのはありません。受取期間は免停期間終了後の翌日からです。
免停終了3ヶ月以内であれば警察署で対応してくれますが、3カ月以上経ってからの返還では自動車運転免許試験場での手続きになることもあります。詳しくは書類でチェックしてください。
必要なものとしては下記の通りです。
- 運転免許停止処分書
- 印鑑
- 身分を証明できる書類
免許証の受け取りは代理人でも可能ですが、その場合、委任状や代理人の身分証明、印鑑などの準備が必要になります。
警察署へ行く時間帯は平日の午前8時30分から午後5時までの間に行くのがいいでしょう。
免停通知の種類は2タイプ
免停通知書には2種類があります。
- 出頭要請通知書
- 意見の聴取通知書
簡単にいえば、処分の重さによってこのどちらかが送られてくるという仕組みです。
出頭要請通知書 | 免許停止期間が90日未満の場合。該当するのは前歴なしの6点~11点、前歴1回の4点~5点の者 |
意見の聴取通知書 | 免許停止の期間が90日以上の場合。該当するのは前歴なしの12点~14点、前歴1回の6点~9点、前歴2回以上の者 |
それぞれ手続きの流れが異なるので今から見ていきましょう。
「出頭要請通知書」が届いた場合の流れ
「出頭要請通知書」は免許停止期間が90日未満の場合に送られてきます。
この場合、先に説明した「免停通知から免停開始までの流れ【基本編】」と同じ手続きの進め方になります。繰り返しになる部分が多いですが、改めて説明していきます。
1.指定された「出頭日と出頭場所」を確認
通知書には「出頭日」「出頭場所」「交通違反の履歴・累積点数」「免許停止となる日数」等が記載されているので、それに従って出頭します。
出頭日を無視していると罰金や罰則が科されてしまうので、やむを得ない事情があって変更したい場合には必ず連絡を入れるようにしましょう。
2.運転免許センターへ
運転免許センターで書類に記入したのち、運転免許証を提出するという流れになります。
免許の停止処分はこの時点で始まるので、帰りには車が運転できなくなります。電車やバスなどを使って出頭しましょう。
3.免停講習(停止処分者講習)を受けると免停期間を短縮できる可能性もあり
免停講習を受講すると、免停期間を短くできる可能性があります。
この講習は義務ではないので、受講の有無は個人が決めることができます。
4.警察署で免許の返還
免停期間が満了すると、警察署に行って免許証の返還をしてもらいます。免停前の出頭の時には指定日がありましたが、これにはありません。ただし、警察署で手続きのできる日時をチェックしておきましょう。
この時に必要なものは以下のものです。
- 運転免許停止処分書
- 印鑑
- 身分を証明できる書類(パスポートや健康保険証など)
免許証の受け取りは代理人でも可能ですが、その場合、委任状や代理人の身分証明、印鑑などの準備が必要になります。
「意見の聴取通知書」が届いた場合の流れ
「意見の聴取通知書」は免許停止の期間が90日以上に該当する場合に送られます。
出頭要請通知書の場合と比べると処分が重く、90日以上の免停や免許取り消しなどの重い処分の者が対象になります。
そのため、処分が公正適切に行われることを保障するために「意見の聴取」、つまりドライバーに意見を述べる機会が与えられます。
欠席した場合には「特に意見がありません」ということを意味するので書類のみの審査になります。
1.指定された「出頭日と出頭場所」に
出頭要請通知書と同じく、通知書には「出頭日」「出頭場所」などが記載されているため、それに従って行動しなければなりません。
やむを得ない事情があって指定日に行けない場合には連絡をして変更手続きをしなくてはなりません。
先に「意見の聴取は欠席することもできる」といいましたが、その場合には後日、「行政処分決定通知書」が送られてくるので、そこに指定された日時・場所に出頭することになります。
2.「警察署」や「運転免許センター」へ
出頭先は警察署や運転免許センターとなります。
必要なものには意見の聴取通知書や印鑑、免許証などがあります。意見を述べる際、自分に有利な証拠を提出したい場合には嘆願書、示談書なども持参することになります。
意見の聴取には「付添人の出席」も制度として認められています。どのような人でも付添人にすることもできますが、弁護士のような法律の専門家が一般的です。
人によっては免停処分が現在の仕事や将来の進路などに多大な影響を及ぼします。少しでも処分を軽減してもらえるよう弁護士にお願いして出席してもらいます。
付添人を出席させる場合にはあらかじめ申請が必要になるので事前に準備が必要です。
3.意見の聴取
聴取の際、違反の内容、事故の概要などについて確認し、弁明する機会が与えられます。
弁護士などの付添人に弁明してもらうこともできます。被害者との示談書、嘆願書、自筆の反省文などを提出することもできます。
聴取の終わった後に「運転免許停止処分書」が渡されますが、そこに免許停止の日数が書かれています。免停開始は意見の聴取の当日からです。
4.免停講習(停止処分者講習)を受ければ、免停期間を短縮できる可能性もあり
免停講習を受講すると、免停期間を短くできる可能性があります。
この講習は義務ではないので、受講の有無は個人が決めることができます。
5.警察署で免許の返還
免停期間が満了すると、警察署に行って免許証の返還をしてもらいます。免停前の出頭の時には指定日がありましたが、これにはありません。ただし、警察署で手続きのできる日時をチェックしておきましょう。
この時に必要なものは以下のものです。
- 運転免許停止処分書
- 印鑑
- 身分を証明できる書類(パスポートや健康保険証など)
免許証の受け取りは代理人でも可能ですが、その場合、委任状や代理人の身分証明、印鑑などの準備が必要になります。
免停講習について
免停講習を受けることで、免停期間を短くすることができます。
免停講習を受講できる期間は決まっていて、免停処分を受けた日から期間の半分が経過するまでの間に限られています。
免停講習の区分
免停講習は免停処分の期間ごとで、以下の3種類に分かれています。
- 短期講習:免停期間30日
- 中期講習:免停期間60日
- 長期講習:免停期間90日以上
免停の処分日数 | 講習時間 | 成績ごとの短縮日数 |
---|---|---|
30日 | 1日(6時間) | 優:29日 良:25日 可:20日 |
60日 | 2日(10時間) | 優:30日 良:27日 可:24日 |
90日 | 2日(12時間) | 優:45日 良:40日 可:35日 |
120日 | 2日(12時間) | 優:60日 良:50日 可:40日 |
150日 | 2日(12時間) | 優:70日 良:60日 可:50日 |
180日 | 2日(12時間) | 優:80日 良:70日 可:60日 |
講習の最後に試験が行われ、その結果によって「優」「良」「可」がつけられ、短縮日数が決められます。成績によっては短縮してもらえない場合もあります。
30日の免停処分者の短期講習の場合、「優」をとれば29日間短縮になるため、免停期間は1日に。
60日以上の免停の場合、「優」をとればおよそ半分くらいの日数を短縮できます。
試験において「優」は85%以上の正答率、「良」は70%以上の正答率、「可」は50%以上の正答率が条件といわれています。これに受講態度なども合わせて成績がつけられます。
免停講習の費用
- 短期講習:12600円
- 中期講習:21000円
- 長期講習:25200円
免停講習は有料です。この金額も免停の期間ごとで異なっています。講習料金は受講当日に支払うことになります。
免停講習の内容
免停講習の受講場所は、交通安全センターや運転試験場です。
講習の内容は以下のようなものがあります。
- 教材・ビデオによる講義
- 運転適正検査
- シミュレーターによる模擬運転
- 座学
これらの最後に交通ルールなどの筆記試験があります。
免停まとめ
免停についてまとめると、以下の通りです。
- 免許停止の期間は最短30日、最長で180日の6種類に区分されている
- 免停通知書が届けられるのは警察の取り締まりを受けてから数週間~1ヵ月程度
- 出頭要請通知書は免許停止期間が90日未満の場合、意見の聴取通知書は免許停止の期間が90日以上に該当する場合に送られてくる
- 免停講習を受けることで免停期間を短くすることも可能