車買取における「二重契約」とは、同じ車を複数の買取業者と同時に売買契約してしまうことを指します。
結論から言うと、二重契約は契約違反にあたり、違約金やトラブルの原因になることがあります。
実際、国民生活センターでも「自動車売買契約は口頭でも成立し、安易な契約はトラブルにつながる」と注意喚起がされています。
ただし、契約の進行状況やキャンセル規定を正しく理解しておけば、深刻な問題に発展する前に対応することも可能です。
この記事では、二重契約の仕組みと発覚の仕方、起こりやすいトラブルの実態、そして万が一の対処法までをわかりやすく解説します。
本記事はCARHACK(運営:株式会社LIF)が制作・編集し、監修者(古物商許可証を持つ会員(奈良県公安委員会 第641180000388号))が内容を確認しています。編集方針は「コンテンツ制作ポリシー」をご覧ください。記事内の情報は公開時点のものであり、十分な調査のもと掲載しておりますが、内容が最新の情報と異なる可能性があります。
車買取・売却時の二重契約によって起こるトラブル

車の買取では、同じ車を複数の業者と同時に契約してしまう「二重契約」によるトラブルが少なくありません。
とくに車一括査定を利用している場合、複数の業者と同時に交渉を進めるため、どの段階で「契約が成立したのか」を誤解してしまうケースが多く見られます。
二重契約で起こりやすいトラブルは、主に次の2つです。ひとつは「キャンセルが認められない」こと、もうひとつは「違約金(損害賠償)」を請求されることです。
買取契約は法的に「売買契約」として扱われるため、契約書に署名・押印をした時点で法的効力が発生します。

つまり、口頭やメールでも「売ります」と明確に合意していれば、契約が成立していると判断されることもあります。
多くの買取業者は契約成立後、すぐに車両の整備や販売準備を進めるため、契約の取り消しは原則できません。
どうしてもキャンセルしたい場合でも、契約書に記載された条件に従い、違約金を支払う必要が生じる場合があります。
また、契約書には「キャンセル可能期間」や「違約金の有無」が明記されているため、サイン前に必ず内容を確認することが大切です。起算日(契約日か引き渡し日か)を誤ると、トラブルの原因になります。
このように、二重契約は売り手側のうっかりで起こりがちなミスですが、法的な責任はユーザーが負うケースが多いのが現実です。複数業者と交渉しているときは、契約書へのサインや口頭の「売却確定」の言葉を慎重に扱いましょう。
車買取・売却の二重契約の解約はキャンセル規定による


では仮に車買取で二重契約をしてしまった時には、キャンセルに応じてくれるのでしょうか。この問いについては、原則としては無理だと考えてください。ただ一部の業者はキャンセルができます。
解約やキャンセルを希望する場合は、契約書に記載された「キャンセル規定」に従うことが絶対条件です。
契約書に規定が書かれていない場合は、事前に確認しておくことが必須です。
フランチャイズで全国展開している業者では店舗ごとに対応が違ってくるので注意しておきましょう。
「契約の段階別」キャンセルの可能性一覧
| 契約の段階 | キャンセルの可能性 |
|---|---|
| 契約はしたが書類と車両を渡していない | キャンセル可能 |
| 契約し書類を渡した状態(車両は自分のところ) | キャンセルはほぼ可能 |
| 車両と書類を渡した状態(入金前の段階) | 買取店舗によるが可能なところもある |
| 入金されて間もない期間(1週間以内) | ほぼ不可能だが買取店次第では可能 |
| 入金されて日が経っている(1週間以上経過) | キャンセル不可能 |
キャンセルの可否は契約の進行状況によって大きく変わります。表は、一般的な車買取の流れにおけるキャンセルの可能性をまとめたものです。
契約書に署名した時点で「キャンセルは難しい段階」に入ることが最大のポイントです。
特に、車を引き渡した後は名義変更や整備が進んでいるため、売買契約を取り消すことはほぼ不可能になります。
一方で、査定前や契約書にサインをしていない段階であれば、キャンセルに応じてもらえることが多いです。とはいえ、査定後に口頭で「売る」と伝えてしまうと、業者によってはその発言をもとに契約と判断されるケースもあるため注意が必要です。
【大手10社調査】車買取契約後のキャンセルポリシーと違約金
| 買取業者名 | キャンセル規定 | 違約金 |
|---|---|---|
| ガリバー | 一定期間キャンセル可能 | 7日間以内なら無料 |
| ビッグモーター | キャンセルできない | – |
| アップル | 店舗によって異なる | 店舗による |
| オートバックスカーズ | 車両の引渡し前まで可能 | 無料 |
| カーセブン | 車両の引渡しから7日間まで可能 | 引渡しから7日間まで無料 |
| ラビット | 店舗によって異なる | 店舗による |
| カーチス | キャンセルの状況次第で対応可能 | キャンセルのタイミングによる |
| T-UP | 契約後のキャンセルは不可能 | – |
| ユーポス | 契約後のキャンセルは不可能 | – |
| ネクステージ | キャンセルの状況次第で対応可能 | キャンセルのタイミングによる |
車買取のキャンセル対応は、業者ごとに大きく異なります。同じ「契約後のキャンセル」でも、キャンセルを受け付ける期間や違約金の有無は統一されていないのが実情です。
キャンセル可否や違約金の取り扱いには明確な業界基準が存在せず、各社の内部ルールに委ねられています。
そのため、複数業者を比較する際は「査定額」だけでなく、「契約後の対応ルール」も同時に確認しておくことが、トラブルを避ける上で欠かせません。
もし二重契約の可能性がある場合や、他社の査定結果を見てから判断したい場合は、キャンセル規定が明確な業者を選ぶのが安心です。
契約前に「キャンセルできる期限」、「違約金の有無」、「名義変更のタイミング」をしっかり把握しておきましょう。
車買取の二重契約はバレる?業者間で情報共有されるケースも


「複数の業者と同時に契約してしまったけど、バレないのでは?」と思う人もいますが、二重契約は高い確率で発覚します。
その理由は、車の売買に関わる手続きがすべて「車両番号」 「登録情報」で管理されているためです。
買取業者は名義変更や陸運局での登録手続きを行う際に、他社がすでに名義変更の申請をしていることを確認できる仕組みになっています。
また、大手業者では中古車流通ネットワーク(オートオークションなど)を通じて情報共有が行われているため、同じ車の買取申請が重なれば、すぐに二重契約が疑われます。
その結果、契約違反として違約金を請求されたり、販売が差し止めになることもあります。
一時的に隠せたとしても、最終的には必ず手続きの段階で発覚します。「バレないだろう」と軽く考えるのではなく、契約は一社に絞ってから進めることが唯一の防止策です。
車買取の二重契約は違法?罰則の有無と注意点


結論から言えば、二重契約そのものが刑事罰に問われるケースは少ないものの、法的には「契約違反」として民事上の責任を負う可能性があります。
つまり、罰金や逮捕といった刑事罰ではなく、損害賠償の請求や違約金の支払い義務が生じるのが一般的です。
ただし、悪意をもって複数の業者と契約し、代金を受け取って逃げた場合などは、詐欺罪として刑事事件になることもあります。
これは明確な「不正な利益取得」に該当するため、民事では済まなくなるおそれがあります。
多くの場合、二重契約は「うっかり」や「手続きの重複」で起こりますが、法的にはどちらも契約違反です。
もし誤って契約してしまった場合でも、早めに正直に申告すれば刑事問題に発展することはほとんどありません。
大切なのは、誠実な対応を取り、金銭や書類を不正に利用しないこと。悪意がないミスであっても、放置すれば大きなトラブルに発展します。不安を感じた時点で、専門家や行政窓口に相談することが安全です。
二重契約をしてしまった場合の対処法


もし誤って二重契約をしてしまった場合は、できるだけ早く両方の業者に状況を説明することが最優先です。
放置したり隠そうとすると、どちらの業者からも「契約違反」として扱われ、損害賠償を請求されるおそれがあります。
まず確認すべきは、「どちらの契約が法的に有効か」という点です。
基本的には先に契約を結んだ業者(署名・押印の早い方)が優先され、後の契約は無効とみなされるケースが一般的です。
そのため、契約日時を証明できる書類やメール記録を整理し、誤解を防ぐために説明資料として提示できるよう準備しておきましょう。
次に行うべきは、後の契約業者に対して誠実にキャンセルの申し出を行うこと。
違約金が発生する場合でも、早めに連絡することで減額や免除に応じてもらえるケースもあります。
また、相手が強引な態度を取ったり、高額な請求をしてくる場合は、消費生活センターや弁護士への相談が有効です。
早期対応こそが損失を最小限に抑える鍵です。迷ったときは自分で抱え込まず、専門窓口を活用しましょう。
二重契約トラブルを回避するために違法業者に気をつける


二重契約によるトラブルを避けるうえで、もっとも注意したいのが違法または不当な契約を行う業者です。
なかには、契約後に法外な違約金を請求したり、「キャンセル不可」と一方的に主張したりする悪質な業者も存在します。こうした業者と契約してしまうと、二重契約が発覚した際に高額な請求や法的トラブルに発展するおそれがあります。
違法業者かどうかを見極めるには、契約書の内容を必ず確認することが大切です。とくに以下の2点は必ずチェックしましょう。
- 契約書に「キャンセルに関する規定」が明記されているか
- 「違約金」の金額や条件が具体的に記載されているか
もしこれらの記載がなかったり、説明を避けるような業者であれば、信頼できないと判断して問題ありません。
違約金の相場は数万円程度が一般的で、あまりに高額な請求(たとえば10万円以上など)があった場合は、消費生活センターや弁護士への相談を検討してください。
車一括査定のアポ電話でキャンセル可否を聞く
車一括査定を利用する際は、査定のアポイントを取る段階で「キャンセルの可否」を確認しておくことも有効です。
業者によっては、「今回の査定に限りキャンセル可能」といった特例を設けている場合もあります。その場合は、後々の「言った・言わない」トラブルを避けるためにも、担当者に一筆書いてもらうか、メールで確認記録を残しておくと安心です。
そもそも二重契約が起こる原因の多くは、「他社の方が高く買い取ってくれる」という状況にあります。
また、強引な勧誘で契約を結ばされた場合も、クーリングオフや消費者保護の観点からキャンセルできるケースがあります。少しでも不安を感じたら、無理に契約を進めず、冷静に確認を行いましょう。
まとめ|二重契約を防いで安心して車を売るためのポイント
ここまで解説してきた内容を整理すると、車買取での二重契約は「うっかり」から起こるケースが多いものの、法的には契約違反として扱われる重大なトラブルです。
とはいえ、契約内容を正しく理解し、慎重に進めれば防ぐことは十分に可能です。重要なポイントを以下にまとめます。
| 契約書の確認 | キャンセル規定・違約金の項目を必ず確認し、不明点はその場で質問する |
|---|---|
| 契約段階の認識 | 署名・押印をした時点で契約は成立。軽い口約束でも成立と判断される場合がある |
| 交渉時の注意 | 複数業者と交渉中は「売る」と断言しない。査定結果をすべて確認してから決定する |
| 違法業者の見極め | 法外な違約金や不明確なキャンセル規定を提示する業者には要注意 |
| トラブル時の相談先 | 消費生活センター・弁護士などの専門機関に早めに相談する |
万が一、二重契約をしてしまった場合の対処手順は次のとおりです。
どちらの契約が先に成立したかを明確にし、契約書やメール記録を整理する。
誠実に事情を説明し、後から結んだ契約のキャンセルを申し出る。早期対応で減額に応じてもらえるケースもある。
高額な違約金を求められたり、強引な対応を受けた場合は、消費生活センターに連絡して助言を受ける。
車買取の契約は「スピードよりも正確さ」が何より大切です。契約内容を一つずつ確認し、無理な勧誘や不明確な条件には決して流されないようにしましょう。
正しい知識と冷静な対応があれば、安心して納得のいく売却ができます。















