車を下取りに出したいのに「名義が自分ではない」と気づいたとき、不安を感じる人は少なくありません。

結論から言えば、親やローン会社、知人など名義が違う場合でも、必要な書類を揃えれば代理で下取りや売却は可能です。
国土交通省の案内でも、名義変更の際には譲渡証明書や委任状、印鑑証明書などが必要と明記されており、正しい書類が揃えば代理での手続きは問題なく進められます。(参照:国土交通省 自動車登録ポータル「自動車の名義変更(移転登録)の手続き」)
この記事では「親名義」や「ローン会社名義」、「故人名義」や「他人名義」といった代表的なケースごとに必要な書類や手順を整理し、代理で売却を進める際の注意点やトラブル回避のコツまで解説します。
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名義が違う車の売却は代理人でも手続きできる
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車検証に記載されている名義が自分ではなく、親や配偶者、ローン会社などになっている場合でも、必要な書類を揃えれば代理で下取りや売却を進められます。
実際に筆者も過去に親名義の車を売却した経験がありますが、委任状や印鑑証明を準備すれば大きな問題はありませんでした。
基本的な流れは通常の車売却と同じで、車検証や自賠責保険証明書、リサイクル券などの書類に加えて、名義人本人が作成した委任状や印鑑証明が必要になります。
代理人となる本人(売却を進めたい側)の身分証明や印鑑証明もあわせて求められるのが一般的です。
こうした追加書類を整えることで、たとえ名義が違っていても下取りは可能です。ただし、ケースごとに必要な書類や手順は異なります。



「親名義」「ローン会社名義」「すでに死亡している名義人」「他人名義」といった具体的なケースに分けて、どのような対応が必要になるかを整理していきます。
名義人が異なる場合の4つのケース


車の下取りを考えるとき、車検証に記載された名義人が自分ではないケースは珍しくありません。
代表的なのは「親名義」や「ローン会社やリース会社名義」、「名義人がすでに死亡している」や「他人名義」の4つです。いずれの場合も下取り自体は可能ですが、必要な書類や手続きの難易度が大きく異なります。
名義人が異なる4つのケース
1. 親名義の車を下取り・売却する場合
親名義の車を下取りに出すときは、本人が同席できなくても代理で手続きが可能です。必要になるのは委任状や印鑑証明など、親が「売却に同意している」ことを証明する書類です。
方法としては大きく2つあります。
- 自分で名義を変更してから下取りに出す方法
- 親から委任状と譲渡証明書を預かり、車買取業者やディーラーにそのまま依頼する方法
実務上は後者を選ぶ人が多く、業者が手続きを代行してくれるため負担が少なく済みます。
注意点として、親が高齢で署名や実印を押すのが難しい場合や、認知症を患っている場合は、成年後見人の選任など法的な手続きが必要になることがあります。
また、親がすでに亡くなっている場合は相続手続きが前提となり、遺産分割協議書や戸籍謄本などを揃えなければ売却できません。
2. ローン会社やリース会社名義の車を下取りする場合
車検証の名義がローン会社やリース会社になっている場合、所有権がまだ自分に移っていない状態です。この場合は注意が必要で、ローンを完済しているかどうかで対応が大きく変わります。
ローンをすでに完済していれば、所有権留保を解除するために名義人である会社へ連絡し、譲渡証明書を発行してもらいます。これを受け取れば、あとは通常の下取りと同じ流れで進められます。
一方、ローン残債が残っている場合は、そのままでは車を売却できません。
売却額で残債を一括返済するか、残債を新しいローンに組み替える必要があります。買取業者に依頼すれば、売却代金から残債を清算して所有権を外す手続きを進めてくれるため、自分で金融機関と交渉するよりもスムーズです。
リース契約中の車については、原則としてリース会社に返却するのが基本です。途中解約で売却を検討する場合は、契約条件をよく確認し、違約金の有無や精算方法を事前に把握しておくことが欠かせません。
3. 名義人がすでに亡くなっている車を下取りする場合
車検証に記載されている名義人がすでに亡くなっている場合、手続きは他のケースよりも複雑になります。相続の手続きを経て所有権を引き継ぎ、その後で売却や下取りが可能になるからです。
具体的には、まず死亡した名義人の戸籍謄本や除籍謄本を取得し、相続人を確認します。
相続人が複数いる場合は「遺産分割協議書」を作成し、全員の同意を得たうえで誰が車を引き継ぐのかを明確にします。その後、相続人から売却希望者への名義変更を行い、さらに下取り先の業者へ譲渡する流れです。
必要書類は、通常の売却に必要な一式に加えて、相続関係を証明する戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員分の印鑑証明書などが必要です。
書類を集める手間が大きく、役所や家庭裁判所とのやり取りも発生するため、時間がかかるのが一般的です。
4. 他人名義の車を下取り・売却する場合
車検証の名義が友人や知人といった「第三者」の場合でも、名義人の承諾が得られれば下取りや売却は可能です。
ただし、他人名義の車はトラブルが起きやすいため、必要書類を正しく揃えることが何より重要になります。
必要となるのは、車検証や自賠責保険証明書、リサイクル券など通常の売却書類に加えて、名義人が実印を押した「譲渡証明書」と「委任状」、さらに名義人の印鑑証明書です。
これらは「本人が売却を許可している」証明となるため、不備があれば業者は契約に進めません。加えて、売却を実際に進める代理人側の印鑑証明書や身分証明書も必要です。
親名義の車を売る・買い替える場合に必要な書類


親名義の車を下取りや売却に出すときは、通常の売却に必要な書類に加えて「親の承諾を証明する書類」が必須になります。
代表的に必要となるのは以下です。
- 車検証、自賠責保険証明書、リサイクル券、納税証明書など基本書類
- 親が署名・押印した委任状
- 親の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 親から譲渡を受けるための譲渡証明書
- 売却を進める代理人(子どもなど)の印鑑証明書と身分証明書
親の状態や同席の可否によって必要書類は変わります。
それぞれの具体的なケース(健在で同席できない/認知症を患っている/すでに亡くなっている)ごとに必要な書類を詳しく解説します。
【ケース別】親の名義変更に必要な書類
1. 親が健在で同席できない場合の必要書類


親が元気で意思表示ができるものの、遠方に住んでいるなどの理由で同席できない場合は、代理人である子どもが書類を揃えて下取りを進められます。
このケースでは「親が売却を認めていること」を証明できる書類が最重要です。
具体的には以下が必要になります。
- 車検証、自賠責保険証明書、リサイクル券、納税証明書などの基本書類
- 親が作成した委任状(実印を押印したもの)
- 親の印鑑証明書(発行から3か月以内のものを2通)
- 親から譲渡を受けるための譲渡証明書(実印を押印)
- 代理人(売却を進める人)の印鑑証明書と実印
- 代理人の身分証明書(運転免許証など)
注意点は、印鑑証明の有効期限が3か月と短いことです。取得のタイミングが早すぎると期限切れになってしまい、再度取り直しが必要になります。
このように、親が健在であれば委任状と印鑑証明を揃えることで代理売却は十分可能です。
2. 親が認知症を患っている場合の必要書類


親が認知症を患っている場合は、たとえ健在であっても委任状や印鑑証明だけでは下取りの手続きを進められません。
契約には「本人の判断能力」が必要とされるため、認知症やアルツハイマー病などでその能力が不十分とみなされると、書類に不備がなくても無効とされる恐れがあるからです。
このケースでは、家庭裁判所に申し立てを行い「成年後見人」を選任してもらう必要があります。成年後見人に選ばれた人が法的に代理権を持ち、車の売却や名義変更の手続きを行えるようになります。
成年後見人を立てた場合に必要となるのは以下のような書類です。
- 成年後見人の選任を証明する書類(家庭裁判所の審判書など)
- 成年後見人の印鑑証明書と実印
- 車検証、自賠責保険証明書、納税証明書、リサイクル券など基本書類
- 譲渡証明書や委任状(成年後見人が作成)
このように、親が認知症を患っている場合は通常よりも手続きが複雑になります。
3. 親が亡くなっている場合の必要書類


親がすでに亡くなっている場合、車の名義は相続財産として扱われます。
そのため、下取りや売却を進める前に「相続手続き」を経て所有権を整理する必要があります。単純に委任状を準備するだけでは手続きは進められません。
具体的な流れは次のとおりです。
- 名義人が死亡したことを証明する戸籍謄本や除籍謄本を取得する
- 相続人を特定し、全員の同意を得て「遺産分割協議書」を作成する
- 相続人の一人に名義を移したうえで、下取り先の業者へ売却する
必要書類は以下のとおりです。
- 車検証、自賠責保険証明書、リサイクル券、納税証明書など基本書類
- 名義人が死亡していることを証明する戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書
- 相続人から売却者へ譲渡を証明する書類(譲渡証明書・委任状など)
このように、親が亡くなっている場合は他のケースよりも手続きが複雑ですが、専門的な知識を持つ買取業者に依頼すれば書類準備をサポートしてくれることもあります。
ローン・リース会社名義の車に必要な書類


車検証の名義がローン会社やリース会社になっている場合は、通常の売却書類に加えて「所有権を解除するための書類」が必要です。これはローンを完済しているかどうかで大きく変わります。
ローンを完済している場合は、ローン会社に連絡して所有権留保解除の手続きを依頼します。その際に発行される「譲渡証明書」と「委任状」があれば、代理人による下取りが可能です。
一方、ローン残債が残っている場合は注意が必要です。車を売却するには残債を一括返済するか、売却額を充当して精算する必要があります。買取業者では売却代金から残債を差し引いて手続きを進めてくれるため、自分で金融機関とやり取りするよりもスムーズです。
所有権留保解除やローン組み直しに必要な書類


ローン会社やリース会社が車検証の名義人になっている場合、まずは「所有権留保」を解除しなければ下取りや売却はできません。所有権が残っているということは、車がローンの担保になっている状態だからです。
ローンを完済していれば、名義人である会社に連絡することで「譲渡証明書」と「委任状」を発行してもらえます。これに加えて以下の書類を揃える必要があります。
- 車検証
- 自賠責保険証明書
- 自動車税納税証明書(または軽自動車納税証明書)
- リサイクル券
- 名義人(ローン会社)から発行された譲渡証明書と委任状
- 代理人(売却を進める人)の印鑑証明書と身分証明書
一方で、ローンの残債がある場合は「残債処理」が前提となります。売却額で残債を完済できる場合は、買取業者が所有権解除の手続きを代行してくれるのが一般的です。
売却額が残債に届かない場合は、追加入金かローンの組み直し(再ローン契約)が必要になります。
筆者の経験でも、完済済みのケースでは所有権解除は数日で完了しましたが、残債がある場合は銀行との手続きに時間がかかり、売却まで1か月近くを要しました。事前にローン残債を確認し、必要書類を早めに揃えておくことがスムーズな売却につながります。
他人名義の車を売却する場合に必要な書類


他人名義の車を下取りや売却に出す場合は、名義人本人の承諾を明確に示す書類が必要です。このケースは特にトラブルが起きやすいため、書類を不備なく揃えることが何より重要になります。
必要となる書類は次のとおりです。
- 車検証、自賠責保険証明書、リサイクル券、納税証明書など基本書類
- 名義人本人が実印を押した委任状
- 名義人本人が実印を押した譲渡証明書
- 名義人本人の印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
- 売却を進める代理人の印鑑証明書と実印
- 代理人の身分証明書(運転免許証など)
書類は一つでも欠けると契約が進まないため、事前確認が欠かせません。特に印鑑証明書は有効期限が短いため、取得から3か月以内に売却手続きを完了させることが大切です。
また、個人間でのやり取りだけに頼るのは避けるべきです。必ず車買取業者を通して契約書を整え、名義変更が確実に完了したことを確認してから取引を終えることが安心につながります。
名義変更の流れ


名義が違う車を下取りに出す場合、避けて通れないのが名義変更の手続きです。方法は大きく分けて「自分で行う」か「業者に依頼する」かの2通りがあります。
どちらを選んでも下取りは可能ですが、必要な書類や手間、費用のかかり方が異なるため、事前に理解しておくことが大切です。
名義変更をする時の2つの方法
自分で行うか業者に任せるかは「時間を優先するか」「費用を抑えるか」で選ぶのがポイントです。それぞれの方法を詳しく解説していきます。
自分で名義変更を行う場合の手順と費用
名義変更を自分で行う場合は、必要書類を揃えて陸運局(軽自動車は軽自動車検査協会)に出向き、窓口で手続きを進めます。平日のみの対応が基本のため、時間に余裕がある人向けの方法です。
必要な書類は以下のとおりです。
- 車検証
- 自賠責保険証明書
- 自動車税納税証明書(軽自動車は軽自動車納税証明書)
- リサイクル券
- 名義人が実印を押した委任状
- 名義人が実印を押した譲渡証明書
- 名義人と代理人双方の印鑑証明書
- 代理人の身分証明書
費用は大きくかかるものではなく、印鑑証明の発行手数料や登録に必要な証紙代で数百円から数千円程度が目安です。名義変更自体の登録手数料は5,000円から6,000円ほどですが、市区町村によって多少異なります。
買取店やディーラー下取りに依頼する場合の手順と費用
名義変更の手続きを買取店やディーラーに依頼する方法は、必要書類を揃えるだけで実務を任せられるため、忙しい人にとってもっとも現実的で安心できる選択肢です。
基本的な流れは以下のとおりです。
- 必要書類を揃える(車検証、自賠責保険証明書、リサイクル券、納税証明書など)
- 委任状や譲渡証明書、印鑑証明書を用意する
- 買取店またはディーラーに提出し、名義変更を代行してもらう
費用については、名義変更の登録料や書類作成の代行料がかかる場合があります。多くは数千円から1万円前後が目安ですが、業者ごとに扱いが異なるため事前に確認しておくと安心です。
自分で行う場合に比べると多少の費用はかかりますが、時間や手間を節約できるのが大きなメリットです。また、業者に任せることで手続きミスや書類不備の心配も少なくなり、トラブル防止につながります。
名義が違う車を買取する際の名義変更トラブル


名義が違う車を下取りに出す場合、書類の不備や手続きの遅れによって思わぬトラブルに発展することがあります。
特に多いのが「自動車税の納税通知が手元に届くケース」です。
自動車税は毎年4月1日時点の名義人に課税されるため、売却したつもりでも名義変更が完了していないと前の所有者に納税通知が届いてしまいます。
さらにまれな例ではありますが、名義変更をしないまま譲渡した車が犯罪に使われた場合、前の名義人に警察から連絡が入るリスクもあります。最終的に責任を問われることは少なくても、余計なトラブルに巻き込まれる可能性は否定できません。
このように「名義が違う車を下取りできるか」自体は問題ありませんが、名義変更の遅れや不備がトラブルの原因になります。確実に書類を揃え、業者に依頼する場合でも名義変更が完了したかどうかを必ず確認しておくことが安心につながります。
まとめ|車売却と名義のポイント整理
名義が異なる車でも必要な書類を揃えれば下取りは可能ですが、状況ごとに求められる対応が変わるため、正確な知識と準備が欠かせません。
大切なポイントを整理すると以下のとおりです。
- 親名義の車は、委任状や印鑑証明を揃えることで代理売却が可能
- 親が認知症の場合は成年後見人の選任、亡くなっている場合は相続手続きが必須
- ローン会社名義は、完済後に所有権解除書類を取得。残債がある場合は精算やローン組み直しが必要
- 他人名義は委任状・譲渡証明書・印鑑証明をすべて揃えることが条件
- 名義変更は「自分で行う」か「業者に依頼する」かを選べる
- トラブルの多くは名義変更の遅れや書類不備。特に自動車税の納税通知や個人間取引では要注意
主要なケース別の対応を表にまとめると以下のとおりです。
必要な対応・書類 | 注意点 | |
---|---|---|
親名義 | 委任状・印鑑証明・譲渡証明書 | 認知症・死亡時は特別な手続きが必要 |
ローン・リース会社名義 | 譲渡証明書・委任状(完済時) | 残債処理や契約条件の確認が必須 |
名義人が死亡している場合 | 戸籍謄本・遺産分割協議書・相続人全員の同意 | 書類が多く時間がかかる |
他人名義 | 委任状・譲渡証明書・印鑑証明 | 書類不備や有効期限切れに注意 |
安心して下取りを進めるためには、ケースごとに必要書類を早めに揃え、業者に依頼した場合でも必ず「名義変更完了」の確認をすることが大切です。
この記事を参考に、自分の状況に合った手順を整理し、余計なトラブルを避けながらスムーズに売却を進めてください。