- 増税前後の違い
- 消費税増税によるその他の車の費用の値上がり
2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられます。自動車の価格は高額であるため、増税は気にせずにはいられません。それに加えて、同じく10月1日より自動車に関する税の仕組みも変わります。
「自動車税」の税率の引き下げ、「自動車所得税」の廃止、「環境性能割」の導入。そのほか、「エコカー減税」など特例措置の見直しもなされます。
結局のところ、車購入に際して知っておくべき税の知識は何なのか。また、税の仕組みが変わることで、増税前と増税後ではどちらがお得に車を買えるのか。今回の記事では消費税の増税や自動車の税金について分かりやすく解説したいと思います。
まずはコレをおさえよう!ひと目で分かる増税前後の違い
まず消費税や自動車に関する税制の改正前後で、どういう変化があるのかを把握しましょう。ここでは詳しい部分は抜きにして簡単にまとめておきます。
税金の種類 | 車購入への影響 |
---|---|
「消費税」10%に引き上げ | 車両の購入価格が高くなる |
「自動車税」の税率が引き下げ | 10月以降に新規登録を受けた車は安くなる |
「自動車所得税」廃止→「環境性能割」導入 | 負担額にあまり変化はない |
あとで詳しく解説しますが、総じて「車の購入は増税前にするのがお得」と言えます。
とくにハイブリッドや電気自動車など燃費性能の高い車種を選ぶのでなければ、購入に際しての負担額は大きくなります。
では、今からそれぞれの税について詳しく見ていきましょう。
A.「消費税10%」車両価格シミュレーション
2019年10月以降、消費税が8%から10%に値上がりしますが、具体的に増税の実感をするために増税前後の車両価格シミュレーションをしてみましょう。
なお、以下の車両価格は計算を単純化するために参考価格から概算しています。
車種 | 消費税8%の参考車両価格 | 消費税10%の参考車両価格 |
---|---|---|
プリウス | 273万円 | 277万円 |
アルファード | 337万円 | 343万円 |
ヴィッツ | 118万円 | 119万円 |
ランドクルーザー | 473万円 | 480万円 |
スープラ | 490万円 | 498万円 |
ピクシス エポック | 84万円 | 84万7000円 |
2%の増税でも、かなり負担が大きくなっているのが分かります。こういう事情を考慮し、しぶしぶ希望の車種やグレードをあきらめなければならない人も出てくるかもしれません。
納車は9月末までに!車購入のタイミング
増税前に購入を考えている人はその時期に注意しましょう。
納車が2019年10月以降になると消費税10%が適用されるので、9月30日までに納車を完了しなければなりません。
増税の話題により、駆け込みで車を買おうとする人が増えます。人気車種などであれば生産が追い付かず、納期が遅れてしまい、結果的に10月を過ぎてから納車されてしまうような事態も考えられます。早め早めに動き出すように心がけましょう。
B.「自動車税」税率の引き下げ
自動車税とは車を所有する者に毎年、課せられる税金のことです。その税額は、お持ちの車の排気量などによって決まります。
2019年10月1日以降、名称も変更となります。自動車税は「自動車税(種別割)」となり、軽自動車税は「軽自動車税(種別割)」となります。
自動車税は消費税の増税にともなって減税されることになりました。
引き下げ額は1,000円~4,500円の幅です。これは自家用の乗用車が対象であり、軽自動車税については変更はありません。
気をつけたいのは、2019年10月以降に初回新規登録を受けた自家用の乗用車となっているので、9月30日以前に登録を受けた自動車の税率は今まで通りのままです。
自動車税は毎年の税金なので10月以降に車を購入した方が節約になりそうに思えますが、消費税やその他の税金など全体で見るとき、それほどメリットのある改正とは言えなさそうです。
C.「自動車所得税」廃止
自動車所得税が廃止となり、環境性能割が導入されます。まずは自動車所得税の仕組みから見ていきましょう。
自動車所得税とは、自動車を取得したときに課税される税金のことです。つまり、自動車税のように毎年の支払いではありません。
自動車所得税の税額の計算方法は少しややこしいので簡単に説明しますと、「課税標準基準額」というおおよそ車両本体価格の約90%の金額と、カーナビなど「オプション価格」を合計したものに3%(軽自動車は2%)をかけた金額です。
例えば以下のような計算になります。
課税標準基準額(120万円)+オプション価格(40万円)×3%=自動車所得税(4万8000円)
なお、中古車の場合、課税標準基準額を新車価格の約90%の金額とし、その金額に残価率(現在の車の価値を表す%)をかけ、さらに3%(軽自動車は2%)をかけた金額です。
この自動車所得税では「エコカー減税」といって、環境性能の優れた車には税の軽減が適用されてきました。
しかし、自動車所得税が廃止され、「環境性能割」が導入されればエコカー減税の適用はなくなります。
D.「環境性能割」は燃費性能などに応じて支払う税金
廃止される自動車所得税の代わりに導入されるのが「環境性能割」という税制です。環境性能割は、車の燃費性能に応じて購入時に払う税金です。課税されるタイミングは自動車所得税と同じく、自動車を取得した時になります。
これも自動車所得税と同様、50万円以上の新車・中古車を購入ないし譲り受けた者が対象です。税額の計算方法は自動車所得税とエコカー減税の計算方法を混ぜ合わせたようなもので、次のような仕組みです。
環境性能割の税額は「自動車の取得価格」に、車に応じた「税率(非課税~3%)」をかけた金額となります。
取得価格とは自動車所得税の計算で説明した「課税標準基準額」というおおよそ車両本体価格の約90%の金額と、カーナビなど「オプション価格」を合計した金額です。
これに例えば税率2%の車なら「取得価格×2%」、電気自動車等なら非課税なので環境性能割を支払う必要はありません。
廃止になる自動車所得税の場合、取得価格に3%をかけた金額でしたので、環境性能割の税率1%や2%で済む車を買うならこちらの方がお得なようにも思えます。
しかし、自動車所得税ではエコカー減税が適用され、税の負担を軽くできました。一方、環境性能割ではエコカー減税は適用されません。つまり、どちらも税額にたいして違いはないといってもいいでしょう。
燃費基準達成度について
環境性能割の税率について、燃費基準値達成度を少し詳しく見ておきましょう。燃費基準値とは、国土交通省がメーカーに求める自動車の燃費性能に対する目標値です。
燃費性能は日々向上してるので、この燃費基準はおよそ5年に1度の間隔で見直され、目標値が設定されます。この燃費基準をどれだけ達成しているかについては、それぞれの車両情報に記載されています。
例えば日産のシーマを調べてみると次のようになっていました。
シーマは「2020年度燃費基準+10%達成車」であるので、以下の表でみると環境性能割の税率は1%であることが分かります。
この税率の数値に「自動車の取得価格」をかけると、シーマの環境性能割の税額が計算できます。
臨時的に環境性能割の税率1%分が軽減される
2019年10月1日~2020年9月30日までの間に自家用の乗用車(登録車・軽自動車)を購入する場合には環境性能割の税率1%分が軽減されることになっています。
つまり、先の図の税率3%の車は税率2%となり、1%の場合は非課税となるといった具合です。
そのため、この臨時的な措置によって1年間はお求めの車の環境性能割が1%分、安くなります。ちなみに、この臨時的な軽減には、中古車の購入も含まれています。
消費税増税による「その他の車の費用」の値上がり
増税は車の購入ばかりでなく、車の維持費の負担にも響いてくるでしょう。車の維持費については、その一つ一つを見ればそれほど影響もなさそうに見えますが、すべてが合わさるとそれなりの負担になってきます。
今から主な維持費を見ていきましょう。
【1】ガソリン代
ガソリン価格は日々変動し、地域によっても異なりますが、例えば年間税込み6万円のガソリン代の場合、消費税10%になると約6万6000円になります。
毎日の通勤で長距離を走っている人や、燃費の悪い車に乗っている人にとっては、それなりに実感のある税負担になるかもしれません。
【2】駐車場代
駐車城代についても、一般的な月極め駐車場などの料金は消費税が課されることになります。一方、青空駐車場のような土地の貸付の場合は非課税らしいです。
月極駐車場を借りている場合、月5,000円や1万円など大きな額であり、増税はなかなかこたえそうです。
【3】自動車保険代
任意保険そのものには消費税はかかりません。ただし、事故したときの車の修理費用などで保険を支払ってもらうとき、保険会社は修理費用の消費税も含めて支払っていることになります。
そうなると保険会社の負担も増えるため、保険料が値上がりする可能性は高いと言えるでしょう。
【4】備品代・修理費、車検費用
車の備品を購入したり、修理に出したりするときにも、消費税の影響があります。また、車検費用も値上がりするでしょう。
増税の前に車の価格が安くなる可能性大
増税前か増税後かどちらが車をお得に買えるかといえば、増税前であるのが分かりました。
これは税の値上がりばかりか、増税前になれば新車・中古車価格が値下がりすることが予測されるからでもあります。
新車の価格「消費税増税前」に値下がりする
新車価格が値下がりする可能性について、過去のデータをもとに考えてみましょう。
かつて消費税が5%から8%へ引き上げられたのは「2014年4月~」ですが、日本自動車販売協会連合会「統計データ」によると次のような数値が出ています。
- 2013年3月:新車販売台数は667,124台
- 2014年3月(増税直前):新車販売台数は783,359台
- 2014年4月(増税直後):新車販売台数は345,221台
これを見れば、増税直前に10万台ほど急激に販売台数が伸びたことが分かります。そして、増税前の安いときに車を買っておこうとする人が増えたのち、増税後に需要が低下しています。
どの販売店も増税前にひとりでも多く買ってもらえるようにとセールなど売上を伸ばす働きかけをしてくるでしょう。
中古車の価格「消費税増税前」に安くなる
中古車も、新車の場合と同じように値下がりすることが予想できます。日本自動車販売協会連合会のデータによると
- 2013年3月:中古車販売台数は449,964台
- 2014年3月(増税直前):中古車販売台数は474,025台
新車ほどではないですが、増税直前になると販売台数が増えています。また、気をつけたいのは増税後になると中古車の値段が高くなる可能性があるということです。
先の増税のとき、増税後に新車の販売台数が低下するのに伴い、中古車の販売台数が上昇しました。その時期、中古車の値上げした販売店が多くありました。
中古車を安く買うのも、増税前の方が確実性が高いと言えるでしょう。
まとめ
2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられます。同じく10月1日より自動車に関する税の仕組みも変わります。
「自動車税」の税率が引き下げとなり、「自動車所得税」の廃止に代わって「環境性能割」が導入されます。
車の購入は、増税前がお得だと言えます。また、増税前になると値下げする販売店も出てくることが予想されます。